情で繋がり、情でつまずく保守の世界~森友学園以外にも繰り返されてきた保守の寄付手法~
同学園で講演会を行った人々は、上記竹田氏をはじめ、櫻井よしこ氏、平沼赳夫氏、百田尚樹氏、中西輝政氏、渡部昇一氏、田母神俊雄氏、など保守界隈のそうそうたるメンツが登場する。しかし彼らへのギャラは竹田氏の証言の様に大した額ではないだろう。ではなぜ、これら保守界隈の重鎮たちはこぞって塚本幼稚園で講演を行ったのか。
そこには、保守界隈という、狭く閉鎖的な世界の中で、「情」が支配する粘着的で複雑な人間関係が構造的に横たわっているからだ。狭い世界の中で「あの人も出たんだから」と言われれば、「情」の論理が優先して断り切れなくなる。そして幼稚園・小学校(院)建設の大義として、「真の愛国教育」などと、保守界隈の誰もが得心し、反対しにくい理由を掲げられると、「情」が先行して断りづらくなる。この界隈は、とことん「理論」よりも「情」が先行する世界だ。
実は森友学園の「寄付手法」から発展して「寄付商法」ともういべきスタイルは、籠池氏がはじめて実践したわけではない。これは保守界隈に伝統的に存在する「情」に基づいた「構造的悪弊」とみなさなければならないのである。
以下、保守界隈=保守ムラが全精力を傾けて「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」という過去の事例を、森友学園疑惑と併せて3例紹介する。そしてそれらがどのように推移し、時として失敗・挫折していったのかも端的に述べる。保守界隈がいかに「情」に支配された特殊で閉鎖的な世界かがお分かりいただけるのではないか。
☆保守言論人・文化人を「広告塔」に寄付を集めた三つの事例☆
1)映画『南京の真実』製作のために寄付金 約3億5000万円 2007年の事例
2007年、旧日本軍が日中戦争時の南京攻略(1937年)の際、多数の非戦闘員を虐殺したとされる事件、所謂「南京事件」は、中国共産党などのでっち上げであり、日本側は潔白だとする趣旨の映画『南京の真実』(監督・水島総)の製作発表会が、同年1月、東京都のホテルニューオータニを貸し切って大々的に行われた。
いわずもがな、「南京大虐殺でっち上げ論」は、保守派・右派とみなされる言論人や文化人らが口にする常套句で、「南京大虐殺でっち上げ」は、保守の言論空間に影響を受けたネット保守の世界でも常識化しており、同映画の理念はその保守派の掲げる思想を物語映像として具現化することにあった。