最新記事

ゲーム

「スイッチ」で任天堂はよみがえるか

2017年3月24日(金)10時30分
ジョン・ガウディオシ

スイッチは柔軟性があるので、ゲーム製作者は室内で遊ぶスタイルと携帯して遊ぶスタイルの両方を検討できる、とゲーム開発・販売会社のアクティビジョン・パブリッシングのジョシュ・タウブ上級副社長は言う。「子供たちは家でも、車の後部座席や飛行機の中でも同じように素晴らしい体験ができる」

開発者に支持されるかどうかは、任天堂にとって決定的に重要だ。Wiiの1億台以上のヒットで他社を圧倒したものの、後継機のWiiUは約1350万台と苦戦(現在は生産終了)。

WiiUには数々の失敗があった。Wiiより高価で、ソニーのプレイステーション(PS)やマイクロソフトのXboxOneにグラフィックで劣った。独自性にこだわるあまりゲーム開発会社から敬遠され、発売当初から魅力的なソフトがないという問題に悩まされた。

【参考記事】ウーバーはなぜシリコンバレー最悪の倒産になりかねないか

かつてないゲーム人口

世界最大のゲームソフト販売店であるゲームストップでは、スイッチの先行予約がWiiUのそれを上回った。「多くの顧客が複数のソフトを注文した。特に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が人気だ」と、販売担当シニアディレクターのエリック・ブライトは言う。

任天堂は89年のゲームボーイ発売以降、ハードとソフトの相乗効果で携帯ゲーム機市場を支配してきた。ニンテンドー2DSや3DS向けの「ポケットモンスター サン」「ポケットモンスター ムーン」といったゲームはベストセラーとなり、こうしたソフトのおかげで3DSは昨年9月時点で累計6100万台以上が売れている。

スマートフォンやタブレット市場には手を出さずにいたが、昨年ついにDeNAと提携して人気キャラクターのモバイルゲームに乗り出した。その1つである「スーパーマリオ ラン」(アップル版)は9000万ダウンロードを達成。アンドロイド版は今月末に配信予定だ。話題となったポケモンGOも120億円以上の利益に寄与した。

スイッチがおもちゃ業界でこの春一番の注目株であることは間違いない。かつてWiiがかけた「世代を超えるゲームの魔法」がよみがえることを任天堂も期待している。Wiiが発売された06年から、多くのことが変わった。あらゆる機器で気軽に、無料のゲームを楽しめる今、かつてないほどゲーム人口は増えている。

任天堂にはさまざまな人気キャラクターがいる。彼らはみんなスイッチで新しい冒険に飛び出そうとしている。

[2017年3月21日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中