最新記事

オーストラリア

絶海の島国ナウルでデング熱が流行、豪難民収容所の住人は大丈夫か

2017年3月1日(水)20時40分
エレノア・ロス

ナウルの豪難民収容所のものとされる写真 Amnesty International/REUTERS

蚊が媒介して感染するデング熱が南太平洋で流行している。南太平洋の島国ナウルには、オーストラリアを目指してやってきた難民たちを受け入れる難民収容所がある。劣悪な環境で悪名高いこの収容所にも感染者が出て、その状態が心配されている。

【参考記事】オーストラリアの難民政策は「人道に対する罪」、ICCに告発

今年1月、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相との電話をドナルド・トランプ米大統領が一方的に切って騒ぎになったが、このとき問題になったのがまさに、ナウルともう1つの島に収容している難民のこと。アメリカが引き受けるという約束をターンブルが確認しようとしたら、「難民などいらない!」とトランプが切れた。それほどお荷物視されている。

英紙ガーディアンによると、ナウルでは70人がデング熱と診断され、少なくとも10人は収容所の難民とみられる。報道によると、うち8人がオーストラリアに飛行機で搬送されたが、ナウル政府はまだ感染者数などを明らかにしていない。デング熱の症状は体温の上昇、急な高熱、下痢など。症状が悪化すれば死に至ることもある。

【参考記事】米ハワイ島でデング熱が流行、非常事態を宣言

世界保健機関(WHO)は本誌の取材に対し、ナウルで50件以上の感染が確認されたと回答した。ナウル政府が管轄する公衆健康センターの所長は、デング熱の流行を宣言し、2月25日付けで公衆衛生に関する警告を発令した。

隔絶された島

デング熱の診断キットや備品が不足するなど、ナウル政府は感染者への対応が追い付いていないとみられ、WHOに医療支援を要請した。オーストラリア保健省からは、回答は得られなかった。

ナウルでは月曜に24歳のパレスチナ人難民が地元の男に襲撃される事件が発生し、収容者の間でさらに緊張が高まった。

ナウルの収容者の状況について、確かな情報を把握するのは至難の業だ。報道関係者はめったに訪問を認められない。情報はほとんどNGOや国連機関頼りで、それも劣悪な生活環境や医療の不足を訴えるものばかりだ。

【参考記事】オーストラリア「招かれざる客」を追い払え!
【参考記事】希望のない最小の島国ナウルの全人口をオーストラリアに移住させる計画はなぜ頓挫したか


ナウルでは、昨年5月に収容者の自殺や自殺未遂が相次いで発覚したことで、収容所の悲惨な実情に世界の関心が集まった。当時オーストラリア政府は、収容者の長期的な定住に向けた取組みを進めていると釈明した。だが収容者はロイター通信の取材に対し、問題が解決する希望はほとんど持っていないと語った。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ

ワールド

イスラエルとヒズボラ、激しい応戦継続 米の停戦交渉

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中