最新記事

ベネズエラ

ベネズエラへ旅立つ前に知っておくべき10のリスク

2017年3月14日(火)19時24分
野田 香奈子


3. 車での長距離移動

食料不足のベネズエラでは、ここ数年、食料を積んだトラックなどが高速道路上で襲撃される事件が相次いでいます。混乱の中で死傷者も出ています。

そして、この高速道路での追い剝ぎビジネスをしているのがプランと呼ばれる刑務所を本拠地とする囚人ギャングのボスだと言われています。

このように、主要ルートの一部が、すでに国家ではなくギャングの管理下にある中、むやみに陸路を長距離移動するのは賢明ではありません。また、襲撃現場に居合わせなくとも、襲撃やストライキ、抗議デモの影響、自然災害で道路が封鎖されることもよくあります。

ついでに言えば、ベネズエラのギャングは国軍から流れた機関銃や手榴弾などで武装しているため、警察の装備では火力的に太刀打ちできません。ちなみに2017年の最初の2カ月間に、カラカスだけで19名の警察官が殉職しています。

【参考記事】ジャーナリストへの情報提供者に忍び寄るベネズエラ諜報機関


4. 闇両替は犯罪です

ベネズエラ在住の日本人の話では、最近は両替トラブルにあって現地の人に助けを求めるような無責任な旅行者が増えているようです。


カラカス空港では、外国人旅行会社に対して闇両替を行なっていますが、2016年になってからトラブルが目立つようになりました。 以前はただ言い値で両替し、その場で札束を手に入れるという方法でしたが、最近の空港職員は闇両替役と空港職員役に分かれて、闇両替役が旅行者と両替した後、空港職員役が現れて「ドルの両替は違法だ、こっちに来なさい」と旅行者を空港の別室に呼び出し、ドルやボリバルを没収するというものです。 このような被害に遭ってカラカス空港で有り金すべてがなくなる日本人が、2016年夏以降増え、私やベネズエラ人パートナーに誰か経由で連絡が来ることが立て続けにありました。


つい数日前も、『ATMで現金下ろせないのを知らず、40$しか持ってません』という若い学生の女の子から電話がかかってきました。


ベネズエラの両替事情は刻々と変化しています。現在は紙幣不足のため、物理的に生活に必要な額の紙幣を集めることが困難です。昨年末には100ボリバル紙幣使用停止の大混乱から略奪もありました。新しい高額紙幣の存在は確認されていますが、問題解消には至っていません。

誰もがやっているとはいえ、法律の黒白が曖昧な状況で、闇両替というあからさまな法律違反を犯すことは、相手につけ入れられる隙を作るという意味で、非常にリスクが高い行為です。


5. シャレにならないゆすり

旅行者に限らず、ベネズエラに暮らす人なら警察や当局の人から賄賂を要求されるのは日常茶飯事です。そこで外国人が歩くATMとしてターゲットにされるのは言うまでもありません。

そもそもベネズエラでの逮捕の目的は、恐喝や人質確保の場合が多いです。(刑務所のプランは囚人を人質にその家族から生活費という名の身代金を要求し、払えないと囚人が拷問を受けたり、食事を与えられなかったりします)。また精神障害を発症したスペイン語を話せない外国人が逮捕された事例もあります。

逮捕の目的が犯罪の取り締まりではない以上、どんな理由で目をつけられるかわかりません。多くの殺人者が野放しの一方で、恋人に会いに来ただけで証拠をでっち上げられて投獄され、8ヶ月経った今も捕えられたままのアメリカ人旅行者もいます。

そして、ひとたびベネズエラに入ると、闇両替、闇市での食料品や医薬品の購入、政府の不都合な情報のツイートを含め、誰もが違法行為に何らかの形で関わってしまいます。誰も安全で潔白な被害者ではいられません。ベネズエラ経済や社会の歪み、独裁政権の共犯者とならざるをえない。これが無法地帯ということです。

刑務所に入れられると、とにかく厄介です。昨今、「逮捕するぞ」という脅しは、ベネズエラ人にとっても旅行者に取っても看過できないリスクとなっています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランの天然ガス施設空爆、米と連携との

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 原油高受けたインフレ圧力

ワールド

トランプ氏訪中、中国が延期で合意 早期に再調整=米

ワールド

高市首相が米国へ出発、「我が国の立場踏まえしっかり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ
  • 4
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 5
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 6
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 7
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中