ベネズエラへ旅立つ前に知っておくべき10のリスク
3. 車での長距離移動
食料不足のベネズエラでは、ここ数年、食料を積んだトラックなどが高速道路上で襲撃される事件が相次いでいます。混乱の中で死傷者も出ています。
そして、この高速道路での追い剝ぎビジネスをしているのがプランと呼ばれる刑務所を本拠地とする囚人ギャングのボスだと言われています。
このように、主要ルートの一部が、すでに国家ではなくギャングの管理下にある中、むやみに陸路を長距離移動するのは賢明ではありません。また、襲撃現場に居合わせなくとも、襲撃やストライキ、抗議デモの影響、自然災害で道路が封鎖されることもよくあります。
ついでに言えば、ベネズエラのギャングは国軍から流れた機関銃や手榴弾などで武装しているため、警察の装備では火力的に太刀打ちできません。ちなみに2017年の最初の2カ月間に、カラカスだけで19名の警察官が殉職しています。
【参考記事】ジャーナリストへの情報提供者に忍び寄るベネズエラ諜報機関
4. 闇両替は犯罪です
ベネズエラ在住の日本人の話では、最近は両替トラブルにあって現地の人に助けを求めるような無責任な旅行者が増えているようです。
カラカス空港では、外国人旅行会社に対して闇両替を行なっていますが、2016年になってからトラブルが目立つようになりました。 以前はただ言い値で両替し、その場で札束を手に入れるという方法でしたが、最近の空港職員は闇両替役と空港職員役に分かれて、闇両替役が旅行者と両替した後、空港職員役が現れて「ドルの両替は違法だ、こっちに来なさい」と旅行者を空港の別室に呼び出し、ドルやボリバルを没収するというものです。 このような被害に遭ってカラカス空港で有り金すべてがなくなる日本人が、2016年夏以降増え、私やベネズエラ人パートナーに誰か経由で連絡が来ることが立て続けにありました。
つい数日前も、『ATMで現金下ろせないのを知らず、40$しか持ってません』という若い学生の女の子から電話がかかってきました。
ベネズエラの両替事情は刻々と変化しています。現在は紙幣不足のため、物理的に生活に必要な額の紙幣を集めることが困難です。昨年末には100ボリバル紙幣使用停止の大混乱から略奪もありました。新しい高額紙幣の存在は確認されていますが、問題解消には至っていません。
誰もがやっているとはいえ、法律の黒白が曖昧な状況で、闇両替というあからさまな法律違反を犯すことは、相手につけ入れられる隙を作るという意味で、非常にリスクが高い行為です。
5. シャレにならないゆすり
旅行者に限らず、ベネズエラに暮らす人なら警察や当局の人から賄賂を要求されるのは日常茶飯事です。そこで外国人が歩くATMとしてターゲットにされるのは言うまでもありません。
そもそもベネズエラでの逮捕の目的は、恐喝や人質確保の場合が多いです。(刑務所のプランは囚人を人質にその家族から生活費という名の身代金を要求し、払えないと囚人が拷問を受けたり、食事を与えられなかったりします)。また精神障害を発症したスペイン語を話せない外国人が逮捕された事例もあります。
逮捕の目的が犯罪の取り締まりではない以上、どんな理由で目をつけられるかわかりません。多くの殺人者が野放しの一方で、恋人に会いに来ただけで証拠をでっち上げられて投獄され、8ヶ月経った今も捕えられたままのアメリカ人旅行者もいます。
そして、ひとたびベネズエラに入ると、闇両替、闇市での食料品や医薬品の購入、政府の不都合な情報のツイートを含め、誰もが違法行為に何らかの形で関わってしまいます。誰も安全で潔白な被害者ではいられません。ベネズエラ経済や社会の歪み、独裁政権の共犯者とならざるをえない。これが無法地帯ということです。
刑務所に入れられると、とにかく厄介です。昨今、「逮捕するぞ」という脅しは、ベネズエラ人にとっても旅行者に取っても看過できないリスクとなっています。