最新記事

米ロ関係

トランプとロシアの接近に危機感、西側同盟国がアメリカをスパイし始めた

2017年2月16日(木)19時20分
カート・アイケンワルド

アメリカに対するこうした情報活動の背景には、NATOを分裂させようとするロシアのウラジーミル・プーチン大統領の思惑と、ロシアに擦り寄るかのようなトランプの言動に対する同盟国の懸念がある。力を得たロシア政府がエネルギー供給を絞るという切り札を使い(西欧諸国は天然ガスのほぼ40%をロシアから輸入している)、米政権の反対を受けることもなく強引な政策を推し進めることへの恐れもある。

いちばん震え上がっているのは、崩壊した旧ソ連から独立したラトビア、エストニア、リトアニアのバルト3国だ。ロシアのウクライナ侵攻に対する西側の経済制裁をトランプ政権が解除した場合、ロシアの軍事的冒険主義に歯止めがかからなくなり自分たちの小さな国も呑みこまれかねないと怯えているのだ。

【参考記事】バルト3国発、第3次大戦を画策するプーチン──その時トランプは

ロシア語を話す人はどこにいようと「保護する」とプーチンは語ったが、ウクライナではロシア系住民は人口の17%を占めるにすぎない。だが米シンクタンク、外交調査研究所によれば、ロシア系が人口に占める割合はエストニアで24%、ラトビアでは27%だ。リトアニアではロシア系は人口のわずか6%だが、ロシアのウクライナ侵攻を受け、政府は7年前に廃止した徴兵制度を復活させた。

大物イーゴリ・セチン

不適切な点はまだ見つかっていないが、リトアニアはさらにレックス・ティラーソン米国務長官とその個人的な旧友でロシア国営石油会社ロスネフチのトップを務めるイーゴリ・セチンの関係について、情報機関による調査を開始した。ウクライナ侵攻後、セチンとロスネフチは制裁対象となる個人・団体のブラックリストに名を連ねている。セチンはティラーソンがエクソンモービルのCEO(最高経営責任者)を務めていた頃の主な取引相手であり、FSB(ロシア連邦保安局=KGBの主要後継組織)の元局員にして、大統領府で保安担当のトップを務めたロシア政財界の大物だ。

「セチンの権力は、プーチンとの関係に由来している」と、在モスクワ大使館から送られた2008年の米国務省公電にはある。「保安機関を統轄する大統領府副長官であるイーゴリ・セチンの権力に、疑いの余地はほぼない。プーチンの派閥内のきわめて有力なメンバーと広く見なされ、FSBの前歴をもつことから、おそらく最も影響のある人物だ」

この影響力、そしてトランプ政権が制裁を解除した際に石油取引を通じてロシアの勢力拡大に果たしうる役割こそ、リトアニアがティラーソン関連の調査でセチンを最大の標的にしている理由だ。それでもアメリカでは、ティラーソンの上院指名承認公聴会でセチンの名前すら挙がらなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、イランとの攻撃の応酬続く レバノン南

ビジネス

米PCE価格指数、1月前月比+0.3%・コア+0.

ワールド

26年度予算案が衆院通過、審議時間は大幅減 参院で

ビジネス

英GDP、1月単月は横ばい イラン戦争で先行きに懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中