最新記事

米中関係

南シナ海、米中戦争を起こさず中国を封じ込める法

2017年2月14日(火)17時09分
アレクサンダー・ビュビン(ダニエル・イノウエ アジア太平洋安全保障研究センター教授)

ティラーソンの証言に関し、フィリピンのパーフェクト・ヤサイ外相はこう言った。「もしアメリカがそうしたいなら、それだけの軍事力があるのだからやらせればいい」 

中国がスカボロー礁ヤミスチーフ礁に近づくのを阻止するキャベツ戦術は、フィリピンなど関係国の沿岸警備隊やボランティア船が参加してくれればより正当性と効果が増す。東南アジア諸国はこれまでも、アメリカと中国のうちより強くて友好的なほうに接近してきた。もしトランプ政権が南シナ海におけるアメリカのプレゼンスを強め、日本や韓国を守るようにフィリピンを守り、尚かつフィリピン内政にも干渉しないつもりであれば、実務的なロドリゴ・ドゥテルテ大統領の支持を取り付けることもできるだろう。

南シナ海の工事に関わる中国人や中国企業に的を絞った経済制裁も、アメリカだけでなく他の大国や周辺国の支持があればより効果的だろう。国有セクターが大きい中国は、その分経済制裁に弱い。南シナ海での建設工事や開発プロジェクトには、海外で利益を上げたい大手国有企業が積極的に関わってきた。

巨大国有企業を狙え

2014年に石油掘削装置をベトナムと中国が同時に領有権を主張する海域に移動した中国海洋石油、人工島に航空機を飛ばして着陸させた中国南方航空や海南航空、人工島の通信ネットワークを担う中国移動(チャイナモバイル)や中国電信、中国朕通、スプラトリー礁の人工島建設のための浚渫工事を請け負った中国交通建設などに損害を与えることができれば、中国国内で南シナ海をめぐる不当な主張は忘れようという動機が生まれるだろう。

中国の人工島建設と人工島へのアクセスを止める用意があるという合図を送るのは、もしアメリカが本気で南シナ海での抑止力を取り戻したいのであれば当然の反応だ。この地域での中国の勢力拡張を止められずにきた失敗の一部は、日に日に現実味を増す中国との戦争の恐怖だ。恐ろしすぎて、論理的な抑止策さえあり得ないように思えてしまう。こうした自己規制は、不必要なだけでなく、戦略的に破滅的な結果をもたらしかねない。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中、通商分野で歩み寄り 301条調査と港湾使用料

ビジネス

テスラの10月中国販売台数、3年ぶり低水準 シャオ

ビジネス

米給与の伸び鈍化、労働への需要減による可能性 SF

ビジネス

英中銀、ステーブルコイン規制を緩和 短国への投資6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中