メルケルがアフリカでドイツ版マーシャルプラン、欧州に囲い込み目指す
ドイツ版マーシャルプランは、アフリカにおける公平な貿易、民間投資の増加、ボトムアップによる経済開発、起業家精神、新たな仕事の創出と雇用に力点を置くという。
アフリカの発展を強調しつつ、ドイツ政府は急成長するアフリカ経済が国内のビジネスにもたらすチャンスも見逃さない。ミュラーは40万社のドイツ企業が海外進出しているデータを引き合いに、わずか1000社しかアフリカに進出していない実態を嘆いて言った。「アフリカの利権を、中国やロシアやトルコに渡してはいけない」
具体的な中身は明らかにされなかったが、ドイツ版マーシャルプランでは、政府が直接インフラ建設などを行う従来型の開発援助から、政府が初期投資を行い民間が投資しやすくする方向に転換するという。「公的資金を呼び水にして民間のアフリカ投資を促進することができる。そうすれば保険会社や年金基金など、より大規模な機関投資家もアフリカ投資に魅力を見出せるようになる」
外国からの援助に頼らないアフリカ諸国の自助努力も促している。汚職の撲滅や投資促進、税収増などに取り組む必要がある。「たとえば、豊かなOECD(経済協力開発機構)加盟国の税率が35%なのに、なぜアフリカの最貧国では17%なのか。アフリカ諸国の多くは天然資源の輸出で儲けているのに、なぜ教育予算が慢性的に足りないのか」
自国第一主義を実践
その上でドイツは、ヨーロッパや国際的なプレイヤーと手を携え、改革を進めるアフリカの国々と共に、インセンティブに基づく改革を推進するパートナー」になるという。改革を進める国に特化した支援をする、というのがポイントだ。ミュラーは、ドイツのアフリカに対する支援の20%を、そうした協力国に向けて供与する意向を示した。
ミュラーは「地中海連合」の構想を提案した。モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプトをEUの域内市場に取り込む試みだ。将来的にアフリカの54カ国とEUが一体の自由貿易圏を作るための第一歩だ。
ドイツと同様、EUもアフリカ新戦略を練っている。11月のEUアフリカ首脳会談に向けた準備だ。フランスは先月、27回目のアフリカ・フランス首脳会談を終えたばかりだ。ドイツや他の欧州諸国に、構想実現のための資金と政治的意思が本当にあるかどうかはまだわからない。それでも、欧州の指導者が、ドナルド・トランプ米大統領が大統領就任式で奨励した「自国第一主義」を実践していることは確かだ。地政学的にも経済成長の大きさでも重要性を増しているアフリカにトランプが目を付けたとしても、欧州ははるか先を走っているはずだ。
J. Peter Pham is vice president of the Atlantic Council and director of its Africa Center.
This article first appeared on the Atlantic Council site.