最新記事

日米首脳会談

トランプとの会談は日ロ首脳会談の二の舞にするな

2017年2月9日(木)17時19分
エミリー・タムキン

だが日本にとってロシアとの友好が贅沢品とするなら、対米関係は必需品だ。

「トランプのアメリカとどう付き合うかは日本の死活問題だ」と、パジョンは言う。北朝鮮の核と中国の海洋進出という2つの脅威に対し、日本には日米同盟に代わる抑止力がない。だがトランプは、日本は平和憲法を盾にとり、軍事支出を抑えてきたと思い込んでいる(安倍はこれを変えようと最大限の努力をしているのだが)。

安倍の手腕しだいで、日本をうまく売り込むことは可能だ。日本は東アジアで最も安定したアメリカの同盟国であり、トランプ政権の少なくとも一部の閣僚はその事実を理解している。ジェームズ・マティス国防長官は就任後初の外遊先に韓国と日本を選び、これまでどおり同盟関係を重視すると強調した。マティスは日本に防衛負担の増加を求めることもなかった。

対中強硬策は日本に危険

それでも日本は安心できない。レックス・ティラーソン国務長官を筆頭に、トランプ政権の一部閣僚は、南シナ海での中国の活動を阻止するため強硬措置を辞さない姿勢を打ち出している。これに対し、中国軍の一部強硬派が「開戦」の可能性をちらつかせるなど、キナ臭い雰囲気になってきている。米中間の緊張が高まれば、日本も紛争に巻き込まれかねない。

【参考記事】トランプ大統領誕生は中国にとって吉と出るか凶と出るか

差し迫った脅威は中国の東シナ海進出だ。これに対抗する日本の究極の拠り所は日米安全保障条約であり、良好な日米関係はまさしく死活問題だ。マティス長官が日本を守ると明言して離日した後、嫌がらせのように中国海警局の船3隻が尖閣諸島沖合の日本の領海に侵入した。

バラク・オバマ前大統領もマティスも尖閣諸島が日米安保条約の適用対象だと明言した。安倍はトランプかその保証を手土産に帰国したいと思っているはずだ。

【参考記事】トランプに電話を切られた豪首相の求心力弱まる


From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中