歴代トップが犯罪容疑にからむIMFに、高まる改革要求
ラガルドは、2011年に前任者が任期途中に辞任をしたことで、IMFトップの座を引き継いでいる。前任者であるドミニク・ストロスカーンは、犯罪行為が疑われて逮捕されたことで、辞任を余儀なくされた。フランスでは将来的には大統領になると見られていたほどの人物だったために、フランス国内でも大きな動揺が広がった。
ストロスカーンの容疑は性的暴行だった。2011年に滞在先のニューヨーク市内のホテルで、IMFトップの職にありながら、従業員に性的暴行を加えたとして逮捕されている。実際に被害者とされる従業員の服からはストロスカーンの体液が発見されたが、ストロスカーンは性的な接触を認め、合意があったと主張した。最終的には、示談で不起訴となっているのだが、彼はニューヨーク市内にあるライカーズ刑務所の塀の中でIMFトップを辞任する意向を手紙にしたためたという。
ラガルドもストロスカーンもフランス人だが、IMFと言えば、これまでの11人の専務理事のうち6人はフランス人だ。その他は、スペイン人のリトや、ドイツ人やオランダ人、ベルギー人、スウェーデン人など。
そもそもなぜIMFのトップは、いつもヨーロッパ諸国の出身者なのか。そのわけは、IMFの専務理事はヨーロッパから選ぶという「紳士協定」が存在するからだ。この紳士協定によれば、IMFの専務理事はヨーロッパから、そして世界銀行の総裁はアメリカから選ばれることになっている。IMFの規約には、専務理事は理事会で指名されるという決まりがあるが国籍についての記述はない。
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ただ、さすがにこの協定も時代に合わなくなってきていると指摘されており、ストラスカーンの後任選びの際は、経済規模が大きくなっているブラジルや南アフリカの高官らが、次の専務理事は途上国から選ぶべきだと要求していた。そしてラガルドやリトの有罪判決といった度重なる不祥事で、今後またその要求が再燃する可能性がある。
IMFに関してはヨーロッパの債務危機への見通しと対応について賛否が起きている。また最近特に台頭している、世界的な国際的機関に懐疑的なポピュリストからの批判が高まる可能性もある。特にラガルドに刑を科さないという異例の判決は、なぜ支配層やエリート層は罰せられないのかというポピュリズム(大衆迎合主義)的な批判が強まるきっかけにもなりかねない。
ちなみにIMFの財源はほとんどがクオータ(出資割当額)で賄われている。最も多く支払っているのはアメリカで、次いで日本、中国、ドイツと続く。そう考えれば、透明性が求められる時代に、どんな歴史があろうが、ヨーロッパから専務理事を出すのはもはや無理があるというものだろう。
有罪判決を受ける前に、他に候補者がいなかったために不戦勝で専務理事として2期目を任されることになったラガルドは、よほどのことがない限り今後約4年はトップの座に君臨する。だがその後、IMFが「紳士協定」を捨て、組織として変わることになるかどうかが注目されている。