最新記事

イギリス社会

職場でハイヒール強要は違法にすべき? 英国下院で審議へ

2017年2月28日(火)15時30分
松丸さとみ

写真は、スコットランド国民党党首ニコラ・スタージョン Russell Cheyne-REUTERS

職場でハイヒールを履くよう雇用主が女性に強要するのは違法とすべきか? 英国議会で3月6日に審議されることになった。2015年に1人の女性が仕事場にハイヒールを履いていかなかったために解雇されたことに端を発する。

ヒールでの勤務を拒否して解雇

ニコラ・ソープさんは2015年12月、英国の受付業務アウトソーシング会社ポーティコから、ロンドンにあるコンサルティング大手のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)に受付嬢として派遣された。

初出勤日にPwCの受付でポーティコのマネージャーと待ち合わせたソープさんは、ドレッシーなフラットシューズで現れた。そこでマネージャーに、ポーティコの服装規定として、女性は約5〜10センチのハイヒールを履かなければいけない、と告げられ、外に買いに行ってくるよう提案された。

しかしソープさんは9時間のシフトで、来客を会議室に案内しなければいけない業務だったため、「ヒールでそれはできない」と拒否。すると、帰宅するよう命じられ、この日の賃金が払われることなく解雇されたという。

ソープさんがこの日起こったことをフェイスブックに投稿すると、似たような状況にあるという女性からのコメントが相次いだ。ソープさんは、こうした「時代遅れで性差別的」な服装規定を違法とするよう政府に訴えるオンライン請願を立ち上げた。

英国議会のウェブサイトによると、オンライン請願を始めてわずか3日で10万件以上の署名が集まったという。英国では、国民の誰もがオンライン請願を始められる。署名が1万件以上集まれば議会から回答が得られ、10万件以上集まれば下院議会で審議してもらえる。ソープさんの署名は最終的に、15万2000件集まった。

ハイヒールの危険性

英国議会はこれを受け、調査の一環で一般の人たちから経験談を募った。すると、販売で1日中立ち仕事をしているにも関わらず自分もヒールを強要されているという女性の悲痛な叫びや、シュー・フィッター協会で働くと言う人からの「仕事でハイヒールを強要することは、性差別的のみならず危険」という意見など、730件の声が寄せられた。

実際、ヒールはどのくらい体に良くないのか。ロンドン・フット・クリニックの足病医アドナン・ナズール氏がNBCニュースのサイトに語った話によると、ハイヒールを頻繁に履くことでアキレス腱が短くなったり、アキレス腱炎になったりする危険性があるという。

またロンドンにある足病医協会は、足の痛み、皮膚の損傷、外反母趾、足から背骨までの関節の圧縮、腰痛、さらに転倒やそれに伴う負傷といったリスクを指摘する。同協会が行った調査では、女性の41%が、履いている靴が痛いという理由で外出などを早めに切り上げて帰宅した経験があると答えたという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中