「脳を鍛える」こともマインドフルネスの一種
――具体的には何をすべきなのか?
まず(1)身体面では有酸素運動をすること。心拍数を増やし、心血管運動につながるスキーやテニス、バスケットボールなどがおすすめだ。ただし、そこまでやる時間がないというのであれば、ちょっと速めのウォーキングでもいい。通勤・通学時にいつもより速めに歩くことは誰でもできるだろう。私自身、過去15年間でいろいろ試してみたが、クロスカントリーが一番いいと思っている。クロスカントリーをするために週2、3回ジムに通い、少しずつトレーニングを続けることが効果的であることがわかった。
(2)メンタル面でやることはやはり瞑想だ。ストレスを感じない人はいない。問題はただ漠然とストレスを感じていること。瞑想することで静かに自分に向き合い、自分のストレスの原因を探り、どのように自分がストレスを感じているかを突き止められるようになる。そうすれば、どうストレスに対処していけばいいのかがわかるようになる。
(3)社会的つながりとは、常に環境を変えるということだ。実は、転職するとまったく新しい環境への適応のために脳がとても活発になり、脳を鍛えることにつながる。とはいえ、脳を鍛えるために転職し続けるなんてことはできないので、同じ職場にいても常に異なるポジションや仕事を求め続けることが大切だ。それも脳を鍛えることになる。残念ながら私の母国スペインは非常に失業率が高いことが社会問題になっている。無職の状態は脳に停滞状態をもたらすため、長期化しないように常に自分を異なる環境にもっていくようにすることが大事だ。
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――日本でマインドフルネスが欧米ほど流行しないのはなぜか?
日本は仏教徒が9割で非常に世俗的と聞いているので、それはおもしろい話だ。実は欧米でも、ヨガや瞑想をはじめとするマインドフルネスは宗教的なものとして取り入れられたわけではなく、心身を豊かにする健康法として取り入れられ、長年ブームになっている。もし、日本人が旅行ついでに寺社を訪ねる習慣があるなら、心を穏やかにしたり、自分を見つめ直す機会であったりと、それもマインドフルネスのひとつではないだろうか。
――脳はデジタルデバイスとどう付き合うべきか?
パソコンやスマートフォンなどのデジタルテクノロジーが脳に悪影響を与えるという話はよく聞くが、実際には「脳を殺している」と言える。ただし、テクノロジー自体が悪いのではない。
人類はテクノロジーの発展に合わせて生活スタイルを変えてきた。たとえば電気のない時代にはそれに合った生活をしていた。ただし、過去20年におけるデジタルテクノロジーの発展は、私たちの脳と健康にかつてないほどの急激な変化と転換を迫っている。そのスピードに私たちの脳が追いついていないのだ。
しかし、いくら「脳を殺している」と言っても、いまや完全なアナログ生活に戻ることはできない。メールをリアルタイムでチェックし、SNSで家族や友人とつながったり、ゲームで遊んだりと、仕事でもプライベートでもデジタルデバイスなしに生活は成り立たない。だからこそ、急速に発展するデジタルテクノロジーと付き合うための脳を鍛える必要がある。
『脳を最適化する
――ブレインフィットネス完全ガイド』
アルバロ・フェルナンデス、エルコノン・ゴールドバーグ、
パスカル・マイケロン 著
山田雅久 訳
CCCメディアハウス