最新記事

映画

セウォル号、接待禁止に台風直撃 韓国社会の問題が噴出した釜山映画祭

2016年10月26日(水)06時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

 それだけではない。一般観客が監督俳優らを間近に見ることができると人気イベントだったマリンシティー「映画の道」で開かれていたスターロードも、企業のスポンサーが激減したことにより中止せざるを得なかった。去年は、25カ国80名余りの著名人が歩き、楽しみにしていた観客たちも多かったイベントなだけに残念な結果となってしまった。

 映画祭の楽しみといえば、各国の珍しい映画を鑑賞できるチャンスでもあるが、俳優や監督らゲスト達が盛りあげる華やかな雰囲気も楽しみである。それが今年は、すっかり減少してしまい全体的に閑散としてしまった。結果的に、来場観客数は16万5,149名。これは、去年の22万7,377名と比べると、27.4%も減少したことになる。

 今までにも第16回開催時には、それまで使っていた「Piff(Pusan International Film festival)」という略称表記を、突然「Biff」に変更したり、開催場所もメイン会場が、ナンポドンからヘウンデ、さらにセンタムシティーに移転したり、小さな変更や困難はあったものの今年ほど大きな問題が次々巻き起こった年は無かった。

ビジネスの場として訪れる映画祭に戻れ

 韓国人の気質を表す言葉として「日本人はできるのにできないと言い、韓国人はできてないのにできたと言う」というものがある。このように、韓国人が何かをやろうとした時のスピードと行動力はすごい勢いがある。対立・天災・新法施行による波紋などさまざまな困難に見舞われ、一時は開催自体が危ぶまれたにもかかわらず、それでも一応開催にこぎつけられた事は賞賛に値するが、一般観客が楽しみにしているイベントの中止など今後の課題は山積みである。特に「アジア最大の映画祭」の看板を維持するためには、一般観客の満足度はもちろんだが、映画関係者らがビジネスの場として訪れる映画祭でなくてはならない。

 韓国人特有の熱しやすくてさめ易い性格により、今回起きた問題等を開催終了とともになかったことにせず、課題として来年に持ち越し、解決しながら文字通りアジア最大の素晴らしい映画祭を維持して欲しいものである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中