インドはなぜ五輪で勝てない?
中国と違って、インドにはスポーツで欧米諸国を打ち負かし、植民地支配の屈辱を晴らしたいというエネルギーが欠けているという問題もあるようだ。
インドオリンピック委員会の関係者さえ、五輪は異国で長期バカンスを取る口実と考えている。多額の予算が、彼らのビジネスクラスの飛行機代に消えることは少なくない。その一方で、選手をサポートするための支出は後回しにされている。
オンライン誌クオーツ(インド版)によると、カルマカルは当初、リオ五輪に「理学療法士の帯同を認められなかった」という。「インドスポーツ局(SAI)が『無駄』と判断したためだ。しかしカルマカルが歴史的な決勝進出を決めると、慌てて理学療法士がブラジルに呼び寄せられた」
4年後の東京五輪でもっと多くのメダルを獲得したいなら、インドは現在の強みを生かして、女子選手の重点的強化に乗り出すべきだ。インド当局の怠慢と、社会的偏見を乗り越える能力とガッツがある女子選手は、男子選手よりもオリンピックレベルのスキルを身に付けられる可能性が高い。
特権的な待遇を重視したり、やたらとベテラン選手をちやほやする風潮に終止符を打つ必要もある。リオ五輪前に最もメディアの注目を浴び、最も多くの助成金を受けたのはベテラン選手ばかり。知名度が低い若手選手(メダル獲得者を含む)へのサポートは乏しかった。
ベテラン選手は実績はあっても比較的年齢が高く、エゴも強いことが多い。リオでもインド代表のテニス選手たちは非常に仲が悪く、ダブルスを組ませると、あっけなく敗退した。
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しかし何より重要なのは、スポーツ文化と呼ぶべきものを育てることだろう。第一歩は、学校やスポーツ施設への投資拡大だ。所得層や地方に合ったスポーツ振興も有効だろう。例えばハリヤナ州では伝統的にレスリングが盛んで、過去の五輪選手のほとんどがこの地方出身だ。
文化的、制度的、食生活などの理由から、インド人に合った種目に集中的に投資することも重要だ。ホッケーとレスリングを別にすれば、インド人は一般に、優れた敏しょう性、柔軟性、集中力が要求される種目(バドミントン、射撃、体操など)が得意。これらの種目では、チーム競技や相手と激しく接触する種目よりも多くのメダルを獲得してきた。
人口が13億人を超えるインドは、それなりの数のメダルを獲得できるはずだ。根本的な問題は分かっている。必要なのは、具体的な行動だ。
ナレンドラ・モディ首相は、衛生など従来タブー視されてきた問題に光を当ててきた。今度はスポーツに光を当てる番だ。
From thediplomat.com
[2016年9月 6日号掲載]