ポケモンGOは大丈夫? 歩きスマホをやめたくなる5つの裁判例
いずれも、人混みの中で歩行者が引いていたキャリーバッグに他の歩行者がつまずいて負傷した――キャリーバッグを引く際も周囲にご注意ください――という事例だが、歩きスマホで衝突負傷事故が起きた場合の参考になりうる。むしろ、歩きスマホには重大な過失があるとして、賠償額が上乗せされてもおかしくない。
ちなみに、次のような事例もある。
●裁判例その3
路上で目当ての店を探していた女性が、人通りの多い交差点で立ち止まって振り返った瞬間に、91歳のお婆さんと接触して転倒させてしまい、お婆さんは大腿骨を折るなどの重傷を負った。
→ 約780万円の賠償命令〔東京地方裁判所 2006年6月15日判決〕
(※道路を歩く者は、自分の身体的能力に合わせ、進路や速度を考えて、他の歩行者と衝突しないように注意する義務がある。ただし、お婆さんにも注意義務への違反があったとして、30%の減額)
→ 賠償の必要なし〔地裁の判決を破棄:東京高等裁判所 2006年10月18日判決〕
(※歩いて店を探し、振り返ったときに他人と衝突しケガを負わせたからといって、それだけで責任を認めることは困難である)
一審では、高額の賠償を命じられたものの、二審で逆転したという裁判例である。担当した裁判官ごとの、ほんのわずかな認定の差によって、結果が大きく変わった。これがもし、歩きスマホの状況(地図アプリを使いながら店の場所を探すなど)だったなら、女性側の敗訴で確定した可能性もあるだろう。
「チャリ漕ぎスマホ」事故は、高額賠償コースへ
自転車の運転中に、携帯電話やスマホを操作することは、歩きスマホよりも遥かに危険であるし、そもそも自転車の片手運転は、法律で定められた安全運転義務などに違反する(道路交通法70条、71条6号ほか)。万が一にも衝突事故を起こしてしまったならば、裁判で大変な結果が待っている。
次の2件は、いずれも暗がりでライトすら付けていなかった事例である。はなから交通ルールを守る気がなかった人々に違いない。
●裁判例その4
高校生が携帯電話を操作しながら、しかも夜間に無灯火で自転車を漕いでいたところ、歩道を歩いていた50代女性にぶつかった。事故後の女性は歩行困難の後遺症を負い、専門職(看護師)の仕事も辞めるしかなくなった。
→ 約5000万円の賠償命令〔横浜地方裁判所 2005年11月25日判決〕
●裁判例その5
自転車に乗りながら携帯電話を操作し、夜間に無灯火で下り坂を走行していたところ、歩行者と衝突、転倒させてケガを負わせた。
→ 約570万円の賠償命令〔横浜地方裁判所2010年4月14日判決〕