最新記事

サイエンス

「エイリアンの作った超巨大構造?」を調査するプロジェクトが資金集めに成功

2016年6月20日(月)16時10分
山路達也

恒星の周りを回る超巨大構造物のイメージ Photo credit: Kevin M. Gill / CC BY-SA

<天文学者たちを悩ませてきた変光星KIC 8462852。エイリアンが建造した超巨大構造が恒星の周りを回っているという説を提唱する科学者もいるが、この謎を解くためのプロジェクトがクラウドファンディングに成功した>

 宇宙には、私たち人類がまだ解明できていない謎が溢れている。その1つが、「KIC 9462852」だ。これは、地球から1480光年離れたところに存在する連星である。太陽より少し大きくて熱い主星と、暗い赤色矮星の伴星がお互いの周りを回っている。

 KIC 9462852が注目されるようになったきっかけは、米エール大学のタベサ・ボヤジアン氏らがケプラー宇宙望遠鏡のデータを元に発表した論文だ。KIC 9462852の主星からの光は不規則な間隔で15〜22%減光するように見え、これは今までの変光星のパターンとは大きく異なっているという。木星並みの巨大惑星がKIC 9462852を横切ったとしても、減光はせいぜい1%にすぎないのだ。

 減光の原因としては、望遠鏡の不具合や大量の彗星の残骸などの説が出されているが、「エイリアンの作った超巨大構造物」説を主張する天文学者もいる。

 突拍子もない話に聞こえるかもしれないが、恒星の周りを回る超巨大構造物というアイデアには元ネタがある。1960年にアメリカの物理学者、フリーマン・ダイソンが唱えた「ダイソン球」だ。高度に発達した文明は、恒星からのエネルギーを最大限に活かすため、恒星を人工構造物ですっぽり覆ってしまうというのである。

 ダイソン球のような超巨大構造物(殻のようにすっぽり恒星を覆っていないにしても)がKIC 9462852の主星の前を横切った時に光が遮られるのではないかというわけだ。ちなみに、[NASAは彗星の群れが原因だという説]を採っているが、その場合は[半径200kmの彗星が64万8000個も列をなして通過しなければならないという反論]も出ている。

 エイリアンの超巨大構造物ではないにしても、これまでに知られていない現象が起こっていることは確からしい。

 結局、KIC 9462852は何なのか? これを明らかにするためには、さらに継続してKIC 9462852を観測する必要があるが、いつ起こるかわからない減光現象を観測するために予算を確保するのは難しい。

 そこで、KIC 9462852について最初に発表したTabetha Boyajian氏らは、ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡を確保してKIC 9462852を観測するプロジェクトを立ち上げ、[Kickstarterでクラウドファンディング]を行った。2016年6月、プロジェクトは目標額の10,000ドルを達成している。
 KIC 9462852の正体を楽しみに待ちたい。

タベサ・ボヤジアン: 宇宙でもっとも神秘的な星(TED Talk)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中