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選挙の当落を左右する!? 味わい深き「疑問票」の世界

2016年6月14日(火)19時04分
長嶺超輝(ライター)

 選挙が始まる際、疑問票の解釈について大まかな方針を総務省が決めることもある。だが、個別事例での最終判断は、現場の「開票管理者」に委ねられる。テレビや新聞に掲示される開票結果の裏では、ちょっと迷惑な疑問票との「格闘」が繰り広げられているのである。

あなたの一票を「疑問票」にしないためのガイドライン

1.余計なことを書かない

 候補者名や政党名のほかに、文字や記号、ふりがなを書く「他事記載」は、原則として無効。ただし、候補者に付された敬称や職業、住所、政党に付された代表者名の他事記載であれば、例外的に有効。

(例:『長嶺さん』『長嶺様』『安倍自民』『丸山弁護士』→○ 『長嶺がんばれ』『バカ長嶺』→× また、『鈴木大地』は、鈴木宗男氏が代表の新党大地という意味と解釈できるため、同党が比例区に候補者を出していれば有効票となりうる。ソウル五輪の背泳ぎ金メダリストもビックリだろう)

2.有名人に投票する場合は注意

 候補者の通称(ニックネーム)は、選管へ正式に届けが出されたか、すでに世間で広く知られている水準のものだけが有効。選挙に向けて候補者側が急にこしらえたようなニックネームは、投票用紙に書いても無効票となる可能性が高い。また、候補者の職業や身分だけを書いたものも無効。

(例:亀井静香候補を指す『ドン亀』『しずかちゃん』、谷亮子候補を指す『柔ちゃん』→○ 『金メダリスト』『元警官』⇒×)

3.政党名を書く比例区では注意

 政党の略称は、選管へ届けが出され、投票所の掲示で正式名称に添えてかっこ書きされているものだけが有効。ただし、ケースバイケースでもある模様。

(例:『自』の一文字だけ書かれた票は自民党への有効票として扱うと、中央官庁が公式見解を述べたこともある。今度の参院選で、『民主』や『維新』は民進党への有効票とされる可能性が高い)

4.まぎらわしい候補者がいる選挙区では注意

 その選挙区において、複数の候補者のどちらに入れたとも解釈できるものは、1票を分割する「案分票」として扱われ、得票割合に応じて各候補者に振り分けられる。開票結果で、まれに小数点以下の付いた得票数が見られるのは、そのため。

(例:2014年の衆院選山口1区には、大物代議士の高村正彦候補〔自由民主党〕と、若手の高邑勉候補〔維新の党〕がいた。この選挙区で『高むら』『高ムラ』とだけ書かれた票は、案分の対象とされた)

明暗が分かれた疑問票の例

●『大つきか○ひ』と書かれた票が、大槻和弘候補への有効票に。この場合の「○」が他事記載かどうかが争われるも、選管や裁判所は他事記載に該当しないと判断している。(2015年、神奈川県相模原市議選/東京高裁2015年12月9日判決 [現在、上告中とみられる])

●『オカラ』と書かれた票を、町の選管は岡田和彦候補への有効票とした。オカラは「オカダの書き間違い」と判断したため。しかし、県の選管は無効と判断。「字の形から、ラとダを書き間違えたとは考えにくい」との理由。(2004年、鳥取県智頭町議補選/朝日新聞2004年10月15日朝刊ほか)

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