最新記事

新興国

米利上げ時の「新興国リスク」に市場は懐疑的、大量資金流出を克服

2016年6月5日(日)21時20分

6月3日、米利上げが6月にあったとしても、それが新興国発の経済危機の引き金を引く可能性は小さいとの見方が、市場で台頭してきた。写真は100ドル紙幣と100元紙幣。1月撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)

 6月に米利上げがあったとしても、それが新興国発の経済危機の引き金を引く可能性は小さいとの見方が、市場で台頭してきた。新興国経済は昨年来の大量資金流出を克服し、底堅く推移。先進国に比べ金利の高い債券の魅力もある。

 伊勢志摩サミットで安倍晋三首相は、新興国リスクに対して強い危機意識を示したが、市場では、マネーの巻き戻しが起きても、その「震度」は大きくならないとの指摘が多い。

1980年代以来の資金流出にも耐性

 国際通貨基金(IMF)が4月に発表した新興国への資金の流れに関する調査結果では、2015年に国内総生産(GDP)の約1%の流出超となった。2008年のリーマン・ショック時や2013年のバーナンキ・ショック時でも、年間ベースでは資金流入超だった。年間での流出超は1980年代以来、初めての現象。

「中国を初めとする新興国経済が不安定な中で、米国が利上げ局面に入った。ダブルのショックが資金流出を加速させた」と、2015年の状況についてある国際金融筋は指摘する。

 ただ、新興国経済は大崩れしなかった。IMF集計による新興国の実質GDP成長率は、リーマン・ショック直後の2009年の3.0%を上回る4.0%を確保。株価も、iシェアーズMSCI新興国市場ETF(上場投資信託)でみて、リーマン・ショック当時に比べ、下落幅は半分程度にとどまった。

 IMFは、1980年台や1990年の新興国からのマネー流出と異なり、2010年から続くマネー流出のマクロ面への影響は「劇的なものではなかった」と指摘している。外貨準備を含む対外資産や、自国通貨建ての対外債務の増加など、国際金融への統合の進展や、為替相場の柔軟性向上などが背景にあると分析している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中