最新記事

イラク

【動画】ISISに蹂躙された魂がさまよう町シンジャール

2016年6月6日(月)17時30分
ノーラン・ピーターソン(デイリー・シグナル)

The Daily Signal-YOUTUBE

<ISIS「ジェノサイド(虐殺)」の現場を行く>

 2013年、イラク北部のシンジャールには8万8000人以上の住民が暮らしていた。今は一人も残っていない。

 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の支配下で地獄を見た後、昨年11月にようやく解放されたシンジャールを記者が訪ねた。

【参考記事】IS敗走後に集団墓地と数100人の遺体

 ISISがシンジャールを制圧したのは2014年8月。ほとんどの住民が町を逃れ、難民になった。ISISは逃げ遅れた住民を捕え、クルド系少数宗派のヤジディ教徒を始め、キリスト教徒やイスラム教シーア派住民を次々に殺害。5000人以上が犠牲になり、後に集団殺戮の跡がいくつも発見される。今年3月、米国務省はISISによる虐殺を「ジェノサイド(民族大虐殺)」と認定。犠牲者の年齢層は1~70歳だった。

 町が解放されたのは2015年11月。2日間の猛攻の末、米軍の空爆による支援を受けたクルド人民兵組織ペシュメルガがシンジャールを奪還した。

 作戦に参加したペシュメルガ民兵はおよそ7000人、うち1500人が町中心部に突撃し、地下に潜んでいた約200人のISIS戦闘員と戦った。

 仕掛け爆弾や遠隔操作の手製爆弾(IED)によって約15人のペシュメルガ民兵が死亡し、30人が負傷した。ペシュメルガの司令官によると、戦闘によるISIS側の死者は35人で、瓦礫の中には更に多くの遺体が埋もれている可能性が高いという。

 空爆や戦闘で町は廃墟と化し、建物はことごとく破壊された。

 それでもシンジャールの支配権をめぐる戦闘はまだ終わらない。周囲3~5キロの地点に拠点をもつISISは、毎日のように大砲やロケット弾を撃ち込んでくるからだ。

 難民となった住民や犠牲者の魂が戻る場所はない。

This article and video below first appeared on The Daily Signal.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾は警戒態勢維持、中国船は撤収 前日まで大規模演

ワールド

ペルーで列車が正面衝突、マチュピチュ近く 運転手死

ビジネス

中国製造業PMI、12月は50.1に上昇 内需改善

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIへの225億ドル出資完
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中