EU・トルコの難民送還合意は不備だらけ
Giorgos Moutafis-REUTERS
<トルコ経由でEUにたどり着いた難民はトルコに送り返すことができる──EUとトルコのそんな合意が、インチキである可能性が出てきた。そもそもトルコは、国際法に定める「安全な第3国」に該当しないのではないかと、ギリシャの司法当局が判断したのだ> 写真はギリシャのレスボス島で送還に抗議する難民や移民たち
ギリシャ当局は最近、トルコ経由でギリシャに到着したシリア難民がギリシャで難民申請することを却下した下級審の決定を覆した。
下級審の判断は、トルコが難民受け入れで国際法に定める水準の保護を提供できるという前提に立ったもの。EUとトルコの合意に基づいてトルコに戻り、トルコで保護を受ければいいという判断だ。だが上級審の見方は逆で、トルコでは十分な保護が受けられない可能性があると判断したのだ。
このことは、EU(欧州連合)とトルコが3月に結んだ難民合意に疑問符を付きつけた。EU域内への難民の流入を抑制するためのこの合意では、トルコ経由でギリシャに到着した難民をトルコに強制送還できることになっているからだ。送還先としてトルコがふさわしくないということになれば、EUは押し寄せる大量難民への対処法を一から考え直さなければならなくなる。
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EUとトルコの合意では、3月20日以降にトルコ経由でギリシャにやってきた不法移民は全員トルコに送還できることになっている。
EU法では、安全な第3国へなら難民を送還できることになっている。安全な第3国とは、1951年にジュネーブで採択された「難民の地位に関する1951年の条約」に沿うかたちで難民が保護を受けられ、迫害や重大な危害、逃げてきた国に送還されるなどの恐れがない国のこと。EUとトルコの合意で重要なのは、トルコがそうした安全な第3国だと想定している点だ。
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トルコは2016年4月、EUに対して、送還されてきた難民は全員保護を受けられると確約し、送還されてきたシリア難民の一時保護を認める法律も通過させた。しかし、トルコが実際に安全な第3国といえるかどうかには大きな懸念がある。そもそもトルコは、難民に関する国際ルールを欧州以外の難民に拡大した「難民の地位に関する1967年の議定書」を批准していないのだ。
ギリシャの新しい難民手続き
トルコの難民受け入れには重大な欠陥があり、最近の法改正をもってしても、労働市場や医療、教育への難民のアクセスにはまだ問題がある。シリアへの強制的な送還も報告されている。これは、生命の危険がある国に送り返さないという、難民条約における重要な原則のひとつ(「ノン・ルフールマン」の原則)に違反している。
ギリシャ上級審の決定には、こうした懸念が影響したようだ。ギリシャのメディアは、この決定でシリア難民のトルコへの送還が保留になるかもしれないと推測している。