最新記事

テクノロジー

リアルなVRの時代がついに到来

2016年5月6日(金)16時00分
マーク・パートン

「バーチャル・リアリティー」という言葉の生みの親としても知られるドレッドヘアのレーニアは、一躍VR業界の顔となり、テクノロジーファンの間でロックスター的な地位を確立した。

 ただ1つ問題があった。「ハードウエアが安くなかった」と、ジマーマンは言う。VPLのアイフォンは89年の発売当初で1万ドル。ほかのVRシステムは20万ドルに上るものもあった。

 その時代、消費者向けに開発されたVR製品はほかにもある。任天堂の3Dゲーム機「バーチャルボーイ」は、90年代半ばの失敗例として有名だ。それから約20年の間、VRは主に研究所や軍事、産業用の高性能機器に限定され、日の目を見ずにきた。
手が届きそうで届かない──一般向けVRは空飛ぶ車や飛行装置ジェットパックなどと同じく、「過去に夢見た未来の製品」で終わるかに見えた。

 VPL社は90年代に破産し、初期のVR開発者たちは他の分野に転向した。ジマーマンはIBMに、レーニアはマイクロソフトの研究者に落ち着いた。

 だがここにきて、ついに技術がVRの構想に追い付いてきた。数十年前より格段に進化したデスクトップコンピューターや高解像度のスマートフォン普及のおかげだろう。

オキュラスが数十億人の日常に

 そんな時代に登場したのがハードウエア開発者のパルマ・ラッキーだ。2012年、ラッキーは資金調達サイトのキックスターターでVRヘッドセット開発の資金を募った。すると4時間以内に目標額の25万ドルを、最終的には240万ドルを調達。彼は後にオキュラスVR社を創業し、定価599ドルの製品版「オキュラスリフト」の予約者向けの出荷が最近始まった。

 同社は14年、フェイスブックに20億ドルで買収された。マーク・ザッカーバーグCEOは当時、オキュラスの技術がいつか「何十億もの人々にとって日常になる」と期待を寄せた。

【参考記事】オキュラスリフトで未来をのぞく

 今年のCESを見渡せば、多くの人が、そして企業がVRの未来に関心を寄せているのが分かる。オキュラスがVRゲームコーナーに設けた巨大ブースはCESの目玉となり、2時間待ち以上の行列ができた。ソニーやサムスン、台湾の携帯電話大手HTCも独自のヘッドセットを実演。仏ソフトウエアのダッソー・システムズや米ケーブルテレビのサイファイ、NASAなどが開発したVR向けアプリも多数発表された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中