最新記事

教育

中国人学生対象の「不正」請負業者、米大学で暗躍

2016年5月31日(火)19時08分

 Rongはコメントを拒否している。彼の父Yuanxin Rongは、昨年11月に深センで行ったインタビューで、UCデービス校が息子を退学処分にしたことを認めた。「大学側は、私たちが(出願の際に)正しい情報を提供しなかったと主張している」と父親は語る。

 父親は、息子が中国の高校からの偽の成績証明書を提出したことも認めている。トランセンドから、マクダフィ校の平均評点が低いことを理由に、中国の高校から偽の成績証明書を取得するよう家族にアドバイスがあったという。

 トランセンドの共同創業者であるLi氏は、当初、中国の高校からのRongに関する成績証明書については何も知らないと話していた。

 ロイターは成績証明書のコピーを入手したが、ファイルはマイクロソフトのワード形式だった。ファイルのメタデータ(その文書に関するコンピューター情報)によれば、そのファイルを最後に保存したのはLi氏だった。文書のコピーとメタデータを示されたLi氏は、トランセンドが偽の成績証明書のファイルを持っており、以前目にしたことがあることを認めた。だが彼は、その文書の取得にトランセンドは関与していないと述べた。

「誰でもそうする」

 Li氏はロイターの取材に対し、トランセンドでは出願書類の代筆は行っていないと話している。また彼は、学生が教師の推薦状を自ら作成することを支援していないとも述べた。だが、ロイターはトランセンドのクライアントである学生50人以上について書かれた推薦状200通以上の草稿を目にしており、とてもそのようには考えられない。

 これらの文書のメタデータは、やはりトランセンドのコンピューターに保存されていたことを示している。推薦状は個人情報扱いとされるのが通例であり、誰かが勝手にそれを修正することを教師が認めることはめったにない。告発者が開示した推薦状には、学生かトランセンドの従業員が作成・修正した兆候が認められる。

 推薦状のうち2通はRongに関するものだった。どちらも、彼がCuiyuan高校に在籍していたと主張している。1通は彼の「傑出した学業成績」に言及している。もう1通では、教師が11年生のRongに数学を教えたとして、彼を「素晴らしい生徒」であると評している。

 別の学生に関する教師の推薦状とされる文書では、欄外にLi氏が「この部分はもっと膨らませる必要がある」とコメントしている。さらに彼は、別の2つの段落を「1つにまとめて短縮すれば、こちらの段落を膨らませる余地を確保できる」とも書いている。

 この推薦状のコピーを示したところ、Li氏は、トランセンドが推薦状を書き直したことはないと述べた。上述の推薦状に関するトランセンドの助言は「学校の教師にしっかり承認してもらっている」という。

 だが、教師の主張は異なっている。当時、深セン中学校の教師を務めていたフィリップ・スタウト氏は、確かにその生徒(ここでは匿名とする)についての推薦状を書いたが、コピーを生徒に渡したことはないし、他人が修正することを認めてもいないと話している。

 Rongの父親は、息子のために別の米大学を探すことになるだろうと話している。中国における偽の成績証明書を手に入れたことについては、なんの後悔も示さなかった。

「よりよい学校に入りたいだけだ」と父親は言う。「普通のことだ。誰でもそうするだろう」。

 (Koh Gui Qing記者、Alexandra Harney記者、Steve Stecklow記者、James Pomfret記者、翻訳:エァクレーレン)

[アイオワシティ(米アイオワ州)  25日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 7
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中