最新記事

ニュースデータ

大卒の価値が徐々に低下する日本社会

2016年4月12日(火)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 ここで想起されるのは、「オーバーエデュケーション」の問題だ。日本は、「今の仕事に求められる学歴よりも、自分の学歴は高い」と考える労働者の割合が世界で最も高い(「日本人、学歴高すぎ? 仕事上の必要以上に『ある』3割」朝日新聞、2013年10月24日)。今や同世代の半分が大学に進学するが、大卒学歴にふさわしい仕事(専門技術職など)は社会にそれほど多くない。

maita160412-chart02.jpg

 各国の高等教育機関(大学・短大・高専)の修了者と、管理職・専門技術職の数を比較すると、前者が後者から溢れているのは日本と韓国くらいだ<図2>。声高に言われることはないが、日本では学歴と職業のミスマッチが起きている。高等教育にはカネがかかるし、その上、社会的に人材が不足しているわけでもないのに、それをむやみに拡大しようとするなら批判を免れない。

【参考記事】「団塊、団塊ジュニア、ゆとり」 3世代それぞれの人生の軌跡

 しかしグローバル化が進んだ現在、高等教育修了生の活躍の場は国内とは限らない。韓国では大卒者の多くが国外に出ていくというが、日本もやがてそうなっていくのだろう。縮小を続ける国内市場だけを見据えると「大学を減らす」方が良いということになるが、これからの人材育成は、国境のない「ボーダレス」社会を想定しなければならない。

 高等教育の効果は、賃金や職業がどうかという経済面だけでなく、社会的な面にも及ぶ。知識や教養ある人間が増えれば、道徳心が増して犯罪が減るなど、社会全体の公共心の向上につながる。高等教育の社会的な効果について、計量的な研究が待たれる。

<資料:OECD『Education at a Glance 2014』OECD『PIAAC 2012』

筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご

ワールド

中国、EU産ブランデーの反ダンピング調査を再延長

ビジネス

ウニクレディト、BPM株買い付け28日に開始 Cア

ビジネス

インド製造業PMI、3月は8カ月ぶり高水準 新規受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中