最新記事

原油

ロシア極東の石油会社、地の利生かしアジア向け輸出拡大

2016年3月21日(月)11時02分

 ロシアの輸出を押し上げたのは「茶壺(ティーポット)」として知られる中国の独立系精製業者の台頭だ。これらの業者は中国原油輸入の約2割に相当する輸入枠を保有している。中国の原油輸入は過去最高の日量800万バレルに達した。

 中国最大の民間精製業者である東明石化集団の李湘平主席は、山東省で最近開かれたイベントの合間にロイターに対し、ロシア産原油が市場シェアを獲得していることについて「質と価格のうまい組み合わせ」が要因だと語った。

 ほぼ全ての「茶壺」は沿岸の山東省に集積し、中東産油国が使用する大型のスーパータンカーを受け入れられない中規模の港に通じたパイプラインに接続している。ロシアは比較的小型の船舶で石油を輸出している。

日本でも勢力伸長

 ロシアはまた、貿易ハブのシンガポールをターゲットとしているほか、日本と韓国でも勢力を伸ばしている。ただ、こうした市場でのシェアは依然としてサウジアラビアに大きく後れをとっている。

 2013─15年で、ロシア極東の韓国向け輸出は倍増し、日量20万バレル超となったほか、日本向け輸出は同国の石油需要減にもかかわらず、約25%増の日量29万バレルとなった。

 日本の精製業界関係者は「距離の短さや輸送の速さによりロシア産原油は早期の精製が可能となっている。変動要因にさらされる精製業者にとって、購入から実際に受け取るまでのタイムラグの短縮化が図れている」と指摘した。

 ロシアの積極的なアジア攻勢により、サウジアラビアやクウェート、イラクといった中東産油国は欧州向け輸出に再び力を入れるようになっている。

 一方、ロシアは次の有望な市場であるインドに目を向けている。同国は需要が供給を上回ったばかりで、伸び率は中国を上回っている。

 ロシア石油大手のロスネフチ[ROSN.MM]の幹部は今週、インドを訪問し、インドの複数の主要精製業者とエネルギー契約を結ぶ予定となっている。

 (Henning Gloystein記者、Chen Aizhu記者 執筆協力:Rebecca Jang in SEOUL, Vladimir Soldatkin in MOSCOW, and Jacob Gronholt-Pedersen and Keith Wallis in SINGAPORE 翻訳:川上健一 編集:加藤京子)

[シンガポール/済南(中国) 17日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウ大統領、和平案巡り「困難な選択」 トランプ氏27

ワールド

米、エヌビディア半導体「H200」の中国販売認可を

ワールド

プーチン氏、米国のウクライナ和平案を受領 「平和実

ビジネス

ECBは「良好な位置」、物価動向に警戒は必要=理事
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中