最新記事

エネルギー

捲土重来を期すロシア、核の勢力圏を拡大

2015年4月2日(木)16時30分
フェリシティ・ケーポン

ロシアに接近する国々

 欧州安保協力機構(OSCE)のコンサルタントを務めていたリチャード・ジラゴシアンによれば、ヨルダン国民の多くは今回の協定に疑問を抱いており、今でこそロシアは甘い顔をしているが、「いずれ厳しい条件を押し付けてくる」のではないかと恐れている。

 一方でジラゴシアンは、ヨルダンに続いて「ロシアの核の傘」に入る国が続く事態を懸念している。「エネルギー不足に悩む諸国は好条件を求めてロシアに取り入ることだろう」

 ロンドン大学キングズ・カレッジで戦争史を研究しているオスカー・ヨンソンも、今回の協定はロシアの核外交の一環であり、「ヨルダンと欧米諸国との関係にくさびを打ち込もうとする動き」と警戒する。ロシアも欧米もヨルダンを重要な同盟国と見なしているが、それはヨルダンが「中東地域では珍しく安定した国」だからだ。

 ヨルダンはNATO加盟国ではないが、欧米の主要な同盟国としてNATOと秘密情報などを共有する機会が多い。「NATOは今回の協定を歓迎できない」とヨンソンは言う。「ロシアはアメとムチを使い分ける。いざとなれば原発の建設工事を意図的に遅らせることもできるし、ヨルダンの情報機関の人間を抱き込むこともできる」

 ちなみに、ロシアはエジプト政府との間でも原発建設に関する覚書を交わしている。ロスアトムはハンガリーでも原子炉建設を受注しているし、フィンランドの原発に核燃料を供給する契約も結んだ。包囲網を狭めたい欧米と、核の傘を広げたいロシアの確執は続く。

[2015年4月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中