最新記事

ロシア

欧州代わりに中国に期待 プーチンの危険な妄想

2014年11月21日(金)12時31分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)

 中国の国有企業は長年イランの石油・ガスの採掘権を手にしながら、アメリカの制裁を理由に開発を渋った。今ではイランの石油業者は中国への軽蔑を隠さず、欧米の石油メジャーとよりを戻したがっている。

国民まで道連れになる

 イランから中国に輸出された石油の支払いも、アメリカの対イラン制裁措置により、イランが中国の銀行に開設した人民元建てのエスクロー(第三者寄託金)口座に入金される。イランはこの資金を中国製品・サービスの購入にしか使えない。中国にとってはイランの石油が手に入ると同時に、自国の製品を売ることもできて一石二鳥だ。

 帝政時代からロシアの政治・経済はヨーロッパを手本にしてきた。18世紀のエカテリーナ2世はフランスの啓蒙思想家ボルテールと文通し、ヨーロッパの啓蒙思想をロシアに広めようとした。ヨーロッパの分裂を招いたソ連の共産主義でさえ、ヨーロッパの知識人とヨーロッパで青年期を過ごした亡命ロシア人が産業革命を受けて起こした、ヨーロッパの運動だった。

 今でもロシアの若者が職探しに向かうのは北京や上海やソウルではなく、ロンドンやパリやコペンハーゲンだ。ロシア人実業家はヨーロッパのサッカークラブやメディアを買収し、ロンドンの高級住宅を買いあさる。

 ロシアの船は昔からヨーロッパを目指してきた。外交でも通商でも多様性は大事だが、ヨーロッパへの腹いせに中国にすり寄る「アジア重視」政策はロシアの得にはならないだろう。損をするのはプーチンだ。しかも国民まで道連れになる。

[2014年11月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送公債依存度24.2%に低下、責任財政に「腐心」

ワールド

米国のベネズエラ封鎖は「海賊行為」、ロシアが批判

ワールド

26年度防衛予算案を決定、初の9兆円台 無人機を数

ワールド

米、ナイジェリアでイスラム過激派空爆 「キリスト教
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中