欧州代わりに中国に期待 プーチンの危険な妄想
中国の国有企業は長年イランの石油・ガスの採掘権を手にしながら、アメリカの制裁を理由に開発を渋った。今ではイランの石油業者は中国への軽蔑を隠さず、欧米の石油メジャーとよりを戻したがっている。
国民まで道連れになる
イランから中国に輸出された石油の支払いも、アメリカの対イラン制裁措置により、イランが中国の銀行に開設した人民元建てのエスクロー(第三者寄託金)口座に入金される。イランはこの資金を中国製品・サービスの購入にしか使えない。中国にとってはイランの石油が手に入ると同時に、自国の製品を売ることもできて一石二鳥だ。
帝政時代からロシアの政治・経済はヨーロッパを手本にしてきた。18世紀のエカテリーナ2世はフランスの啓蒙思想家ボルテールと文通し、ヨーロッパの啓蒙思想をロシアに広めようとした。ヨーロッパの分裂を招いたソ連の共産主義でさえ、ヨーロッパの知識人とヨーロッパで青年期を過ごした亡命ロシア人が産業革命を受けて起こした、ヨーロッパの運動だった。
今でもロシアの若者が職探しに向かうのは北京や上海やソウルではなく、ロンドンやパリやコペンハーゲンだ。ロシア人実業家はヨーロッパのサッカークラブやメディアを買収し、ロンドンの高級住宅を買いあさる。
ロシアの船は昔からヨーロッパを目指してきた。外交でも通商でも多様性は大事だが、ヨーロッパへの腹いせに中国にすり寄る「アジア重視」政策はロシアの得にはならないだろう。損をするのはプーチンだ。しかも国民まで道連れになる。
[2014年11月25日号掲載]