中国が刺激したロシア海軍の復活
狙いは北極海に眠る資源
ロシア黒海艦隊の元司令官エデュアルド・バルティンに言わせれば、「ロシアは20世紀末に残念ながら失ってしまった国力と国際関係を取り戻しつつある。誰だって弱い国ではいたくない」のだ。
プーチンは、ロシアの経済的権益を拡大するためにも海軍力を使うつもりだ。
念頭にあるのは北極海。技術の進歩と気候の変化で、北極海の海底に眠る豊富な鉱物資源へのアクセスが可能になりつつある。ロシア政府は、北極圏の海底の多くは地理的にロシア北部の領土の延長であり、国際法の下でロシアに領有権があると主張している。
一方、ロシア北方艦隊のアンドレイ・コラブリョフ司令官は20年前に放棄したノボシビルスク諸島の基地を再開させるという計画を発表している。ここに軍艦10隻と原子力砕氷船4隻を配備し、強化する考えだ。また、北極海に浮かぶほぼすべての島に軍の施設を置き、「空から水面下までを監視する統合システム」を構築したいという。
北極海の底には膨大な量の石油・天然ガスが眠っているとされ、ロシアはその資源開発権を確保すべく、北方艦隊の艦艇を北極海に浮かぶフランツヨセフ諸島やセベルナヤ・ゼムリャ諸島、ノボシビルスク諸島、ウランゲリ島に送って巡視させる計画もある。この石油資源をめぐってはアメリカやカナダ、デンマーク、ノルウェー、さらに中国も権利を主張している。
中国とロシアの海軍。この2つのうち、今のところアメリカが特に警戒しているのは中国海軍だ。中国政府の遠大な主張は「アメリカの軍事力と地域の安全保障に重大な影響を及ぼす拡張戦略」に当たる、とラトナーは言う。昨年12月には空母「遼寧」の打撃群に属する軍艦1隻が本隊から離脱し、米海軍のミサイル巡洋艦カウペンスに向かって真っすぐ進むという一触即発の事態も起きている。
言うまでもなく、アメリカの海軍力は今も世界一だ。しかしライバルとの差は縮まっている。しかも急速に。
[2014年7月29日号掲載]