最新記事

アフリカ

中国人作業員も襲われたスーダンの混沌

南スーダン産原油の利権をめぐって南北対立は激しさを増す一方

2012年1月31日(火)18時13分
トリスタン・マコーネル

歓喜の日 南スーダンの独立記念式典で行進するSPLA兵士(2011年7月) Goran Tomasevic-Reuters

 昨年7月にスーダンからの分離独立を果たした南スーダン共和国。だが歓喜の声に沸いた日から半年経った今も、南北間の対立が収まる気配はない。

 先週、スーダンとの国境に近い地域で大規模な襲撃事件が勃発し、老人や子供など70人以上が殺害された。南スーダン政府はいつものように、スーダンを非難するコメントを発表した。

 こうしたお決まりの非難の言葉は、事実である場合もあれば、言いがかりのケースもある。

 南スーダンの内相は、武装勢力に武器を提供したのはスーダン政府に違いないと主張したが、組織名を特定することはできなかった。その意味では、今回の非難合戦は今まで以上の茶番劇にみえる。

 事実がどうであれ、国交がないに等しいほど悪化の一途をたどっている南北スーダンの危うい関係が、この一件であらためて浮き彫りになったのは確かだ。

 目下の最大の争点は原油だ。南スーダン産の原油の輸出にはスーダンを通るパイプラインを使用する必要があるが、その使用料をめぐって両国の対立が過熱。スーダンが原油を差し押さえたことに対抗して、南スーダンは石油生産を完全に停止している。

 たとえこの問題が解決しても、紛争のネタは山のようにある。債務の分配方法、国境線、スーダンに住む南スーダン出身者の国籍問題、反体制派への支援、南北の境界にある油田地帯アビエの帰属問題......。

本格的な戦争に突入する可能性は?

 1月28日にはスーダンの南コルドファン州で、現地の道路建設を請け負う中国企業の拠点が襲撃されに、中国人スタッフ29人が拉致された。犯行グループは、南スーダンの与党である「スーダン人民解放運動(SPLA)」の系列の武装組織とみられる。

 もっとも、長年の内戦を経てようやく分離を果たした南北スーダンが、再び本格的な戦争に突入する可能性は低いだろう。過去50年の大半を戦闘に費やしてきた両国は、戦争がもたらす人的・経済的犠牲の大きさを熟知している。

 それでも国境に近いエリアでは、南北対立の激化がひしひしと感じられる。両政府の支援を受けた武装勢力間の小競り合いや難民キャンプへの空爆、凶作などの難題が重なり、深刻な人道危機が進んでいる。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中