外国人花嫁の死が物語る韓国の病理
苦しんでいるのは異国に嫁いだ女性たちだけではない。一般的に、こうした国際結婚家庭は経済的に恵まれておらず、夫婦の間に生まれたハーフの子供たちは純粋な韓国人の子供に比べて学業成績がよくない傾向にある。
政府の調査によれば、国際結婚家庭の約60%が毎月の世帯収入200万ウォン(約15万円)未満という貧困に近いレベルの暮らしをしている(韓国の平均世帯収入は毎月330万ウォン(約25万円)だ)。
国際結婚カップルの子供(7〜12歳)の就学率は80・8%。高校進学率になると26・5%で、国の平均を大きく下回るという統計も在る。世界で最も教育水準の高い韓国の教育熱を考えれば、この数字は低すぎる。
セーブ・ザ・チルドレン韓国のキム・ヒキュンは、外国人が韓国社会に溶け込む努力をするだけではなく、韓国社会が異なる文化の受け入れ方を学ぶ必要もあると語る。
韓国人の「純血」に疑問の声も
「韓国人の子供たちに対する(多文化)教育にもっと力を入れるよう政府に働きかけている」と、キムは言う。「(人種・文化的)マイノリティーだけでなく、マジョリティーの側も教育すべき時期が来ている。なのに、政府はマイノリティーをどう韓国社会に同化させるかにばかり目を奪われ、多様性をいう概念を受け入れようとしない」
中核にあるのは、韓国社会が「単一文化」でなくなることに対する強い抵抗心だ。「韓国が単一民族・単一文化の国であるという古い概念を捨て、多様化という現実を受け入れなければならない」と、政府の国際イメージ振興機関「国家ブランディング委員会」のリー・チャンボウムは言う。
自分たちの祖先は太古の時代から朝鮮半島に居住し、外国の侵略や占領、その他の介入に耐えて自分たちの文化を汚れなきまま守り抜いてきた──。韓国人は学校でそう教えられて育ってきた。
しかし釜山にある東西大学校国際関係学部のブライアン・マイアーズ学部長は、著書『最もきれいな民族』の中でこんなことを述べている。19世紀終わりに日本が侵略して初めて、日本人に対する競争心や植民地政策に対する抵抗という形で韓民族の独特なアイデンティテイーが形成された。また中国と日本の侵略によって、韓民族の血は混じっている、と。
韓国では現在、異なる文化への寛容性を育てるような政府主導の教育プログラムはない。セーブ・ザ・チルドレンのキムが、政策として実施すべきだと主張する異文化教育だ。
「国際結婚で生まれた子供は大抵の場合、自分が周りと違う存在だとは意識していない。だが、周りからは『違う』と分類される。(例えば韓国人とベトナム人の子供の場合)政府は韓国語の修得のみを促し、ベトナム語の修得は必要ないという立場を取っている。これでは、子供たちがベトナムは韓国より劣っていると考えるようになる」と、キムは言う。「そして彼らはベトナムに関するものすべてが嫌いになってしまう」