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スポーツ日本人論という神話

個の力で劣る日本選手が組織と団結で世界に挑む──そんな時代遅れの「物語」から私たちは自由になるべきだ

2011年5月13日(金)10時11分
森田浩之(ジャーナリスト)

祝福のとき インテルでの初ゴールを決めた長友。彼は「世界一のサイドバックになる」と宣言している Giampiero Sposito-Reuters

「日本の強さは団結力です」

「日本が1つのチームなんです」

 東日本大震災の後にテレビで流れている公共CMに、ヨーロッパでプレーするサッカー日本代表選手たちがそう語るものがある。

 被災者と日本全体に向けた力強いメッセージ。しかし「団結力」が日本の強さだと訴えるCMにサッカーの代表選手が起用されたのには、大きな理由があるだろう。それは、日本代表が「組織力」や「団結力」の象徴としてメディアに祭り上げられてきたためだ。

 日本のメディアには、他国にほとんど見られない一大ジャンルがある。「日本人論」だ。この分野では数え切れないほどの本や記事が出版され、文化や言語から、社会、精神構造まであらゆる面について「日本人はこういう国民」「日本人はこんなに特殊」と唱え続けてきた。

 スポーツを伝える報道にも「日本人論」があふれている。日本選手が海外でプレーしたり国際大会に出場するとき、メディアには「日本」と「日本人らしさ」をめぐる物語があふれ出る。勝因も敗因も、裏側にあるドラマも、日本人の国民性(例えば集団主義)や社会の特徴(「出るくいは打たれる」)や身体の特性(小柄で俊敏で器用)と絡めて語られることが少なくない。

 そこにある前提の1つは、日本人は「個の力」が弱く、それを補うために得意の「組織力」を駆使しなくてはならないというものだ。もっともらしく聞こえる。しかし、どこまで本当なのか。...本文続く

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