最新記事

インタビュー

起業家育成のカリスマに学ぶ成功の極意

『20歳のときに知っておきたかったこと』の著者ティナ・シーリグに聞いた、失敗を成功に変える術

2010年12月20日(月)17時56分
小暮聡子(本誌記者)

成功の道案内 スタンフォード大学で起業家育成コースを教えるティナ・シーリグ Jun Takai

 アメリカでは、不況になると起業する若者の数が増えるのはなぜ? 成功する起業家が失敗を恐れないのはなぜ? 起業のメッカ、シリコンバレーのスタンフォード大学で起業家育成コースを教えるティナ・シーリグによると、すべての答えは失敗やチャンスをどう捉えるかにある。著書『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』(邦訳・CCCメディアハウス)の中で、自分自身の手で人生を切り開く極意と面白さを語りかけるシーリグに、本誌・小暮聡子が聞いた。

*  *  *  *  *


──著書の中で、「キャリア・プランニングは外国旅行に似ている。予定になかったことが一番面白い」と書いていたが。

 独創的な人間になるには、世の中を外国人旅行者のような目で見る必要がある。外国人は思い込みを持たずに、新鮮な目で物事を見られるから。

──今回はあなた自身が日本に初来日した外国人だ。新しい発見はあったか。

 日本の文化はとても歴史が深い。それはもちろんすばらしいことだが、乗り越えるべき課題にもなり得る。日本の若者は、両親が歩んだ道、伝統的な道を選ぶべきなのか、新しいことを始めるべきなのか、板ばさみになっている。

 私が住んでいるカリフォルニアの文化は若くて、「唯一の正解」というものがない。日本では正解は1つしかないため、人と違うことを始めようとする若者は、まず壁にぶつかる。

──アメリカで日本人学生を教えたことはある?

 もちろん。でもスタンフォード大学に来ると、彼らを取り巻く環境はガラリと変わる。すると、彼らの態度も変わる。つまり、日本人学生に問題があるわけではない。問題なのは彼らを取り巻く環境だ。

──スタンフォード大学のDスクール(「デザイン思考」を教える学際プログラム)では、大きな見返りを得るために大きなリスクをとることを重視し、学生のとんでもない失敗を歓迎すると、あなたは書いている。でも実際にリスクを歓迎する企業は危ないのでは?

 起業家というのは、向こう見ずな冒険家ではない。危険など冒したくないから、すべてのリスクを排除しようと努力する。最高の人材と最高の技術をかき集め、資金調達も抜かりなく行おうとする。

 起業とは突拍子もない思いつきを突然実行することではなく、入念に準備した上で大きな課題に挑戦し、解決しようとすることだ。私が何の準備もせずエベレストに登ると言い出したら、命知らずでバカなこと。でも、ちゃんと登山の訓練を受けて装備を万全にし、登山の熟練者とチームを組んで登れば、リスクを軽減できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意 ロシ

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中