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新型インフルエンザアフリカを脅かすウイルス第2波
国際線の旅客の少なさなどからH1N1型の攻撃を免れてきたアフリカだが、安心はできない
6月11日、WHO(世界保健機関)は新型インフルエンザの警戒レベルを世界的大流行(パンデミック)を意味するフェーズ6に引き上げると宣言した。油断が許されない状況が続くなか、疫学者が疑問に思っていることがある。ある大陸だけがH1N1型ウイルスの攻撃をほぼ免れているのだ。
世界で報告されている3万5000件の感染のうち、人口10億人以上のアフリカでの報告例は40件未満。専門家はこの原因として交通システムの違いを挙げる。
今のところ、H1N1型ウイルスは国際便の乗客を介して運ばれているようだ。国際線のハブ空港を通じた感染例が目立つ。ニューヨークの空港の年間乗客数は1億人で、シドニーは3200万人だ。
だが、年間乗客数がそれぞれ約200万人のダカール(セネガル)やアブジャ(ナイジェリア)は、ウイルスの攻撃を免れてきた。
アフリカの医療制度が遅れているせいだという声もある。アフリカにもH1N1型ウイルスは上陸しているが、公衆衛生に携わる政府職員が少な過ぎて発見できないか、医師がマラリアなどと誤診しているのかもしれない。ただし、ボツワナやセネガルなど医療態勢が整った国でも感染の兆しは見つかっていない。
サハラ以南では7月がピーク
一方で、専門家が確信していることもある。アフリカは警戒態勢を緩めるべきではないということだ。ウイルスは急ピッチで変異しており、6月中旬にもブラジルで新しい変異株が見つかった。「ウイルスに変異はつきものだ」と、新型インフルエンザの変異株の分離に取り組む生物学者のラウル・ラバダンは言う。
心配なのは最悪の事態はこれからやって来るだろうということ。20世紀の3度のインフルエンザ大流行(18年、57年、68年)はすべて、当初の感染が一度収まってから急拡大。より致死率の高いウイルスが猛威を振るった。
今回も同じパターンだとしたら、疫病に対して最も無防備なアフリカは、第2波が来たときに深刻な影響を受けるだろう。
インフルエンザの季節はアフリカ北部で終わりつつあるが、サハラ以南の地域では7月がピーク。医療態勢が未整備のこの地域では、蔓延の兆候を早期に捉えるのは難しいだろう。
現時点までのWHOの働きは立派なものだ。だがH1N1型の本当の怖さが分かるのはこれからかもしれない。新型インフルエンザがアフリカに襲い掛かったら、甚大な被害が生じる恐れがある。
[2009年7月 1日号掲載]