最新記事

新型インフルエンザ

アフリカを脅かすウイルス第2波

国際線の旅客の少なさなどからH1N1型の攻撃を免れてきたアフリカだが、安心はできない

2009年6月24日(水)14時55分
アンドルー・バスト

 6月11日、WHO(世界保健機関)は新型インフルエンザの警戒レベルを世界的大流行(パンデミック)を意味するフェーズ6に引き上げると宣言した。油断が許されない状況が続くなか、疫学者が疑問に思っていることがある。ある大陸だけがH1N1型ウイルスの攻撃をほぼ免れているのだ。

 世界で報告されている3万5000件の感染のうち、人口10億人以上のアフリカでの報告例は40件未満。専門家はこの原因として交通システムの違いを挙げる。

 今のところ、H1N1型ウイルスは国際便の乗客を介して運ばれているようだ。国際線のハブ空港を通じた感染例が目立つ。ニューヨークの空港の年間乗客数は1億人で、シドニーは3200万人だ。

 だが、年間乗客数がそれぞれ約200万人のダカール(セネガル)やアブジャ(ナイジェリア)は、ウイルスの攻撃を免れてきた。

 アフリカの医療制度が遅れているせいだという声もある。アフリカにもH1N1型ウイルスは上陸しているが、公衆衛生に携わる政府職員が少な過ぎて発見できないか、医師がマラリアなどと誤診しているのかもしれない。ただし、ボツワナやセネガルなど医療態勢が整った国でも感染の兆しは見つかっていない。

サハラ以南では7月がピーク

 一方で、専門家が確信していることもある。アフリカは警戒態勢を緩めるべきではないということだ。ウイルスは急ピッチで変異しており、6月中旬にもブラジルで新しい変異株が見つかった。「ウイルスに変異はつきものだ」と、新型インフルエンザの変異株の分離に取り組む生物学者のラウル・ラバダンは言う。

 心配なのは最悪の事態はこれからやって来るだろうということ。20世紀の3度のインフルエンザ大流行(18年、57年、68年)はすべて、当初の感染が一度収まってから急拡大。より致死率の高いウイルスが猛威を振るった。

 今回も同じパターンだとしたら、疫病に対して最も無防備なアフリカは、第2波が来たときに深刻な影響を受けるだろう。

 インフルエンザの季節はアフリカ北部で終わりつつあるが、サハラ以南の地域では7月がピーク。医療態勢が未整備のこの地域では、蔓延の兆候を早期に捉えるのは難しいだろう。

 現時点までのWHOの働きは立派なものだ。だがH1N1型の本当の怖さが分かるのはこれからかもしれない。新型インフルエンザがアフリカに襲い掛かったら、甚大な被害が生じる恐れがある。

[2009年7月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、経済スパイ理由に外交官追放 英外務省反発

ワールド

高市首相、赤沢氏を重要物資安定確保担当相に任命 対

ワールド

スペイン、米軍機の領空通過を拒否 対イラン攻撃で

ワールド

英住宅ローン承認件数、2月は3カ月ぶり高水準 今後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中