新型コロナワクチン接種で生理不順に? 月経周期追跡アプリが活躍し解明=研究
しかし、新型コロナワクチンの臨床試験では、生理中の被験者に生理に関する質問はされなかったという。そのため情報収集の貴重な機会が失われてしまった。そこで、私たち研究者は、被験者の体験談を聞きながら、信頼できるデータを収集し、研究に生かすという方法をとった。
ワクチン接種による月経の変化と、そうでないものを区別するアプローチを考案するのは難しいことだったが、既存のデータセットを分析することで、迅速に研究を進めることができた。
その結果、新型コロナウイルスワクチン接種が生理周期に変化を起こすことは明らかではあるが、自然に起きる際の変動と比べて小さいもので、すぐに治まることが分かった。
月経周期追跡アプリの活躍
実はこのデータ収集に最も役に立ったのが、月経周期追跡アプリだ。日本でも多くの女性に利用されている。
月経周期追跡アプリは、リアルタイムでデータを収集することで、参加者が後で自分の経験を間違って記憶したり、周期の変化に気づいた人がそれを報告するための動機付けが強くなる。思い込みを元にして誇張されてしまうことを防ぎ、不正確さを減らすことができた。
アプリのデータを用いた3つの研究では、月経周期中に新型コロナウイルスワクチンを1回接種すると次の生理が約半日遅れるのに対し、同じ周期内に2回接種すると次の生理が約3日遅れることが分かった。
重要なのは、1周期内に2回目を接種した場合でも、2周期以内に生理のタイミングが正常に戻ること。
また別の調査では、ワクチン接種の結果、約4%の人が通常より生理が重くなるが、これも次の周期には正常に戻ることが分かっている。
つまり、新型コロナウイルスワクチンの接種によって、月経周期が一時的に変化することがある、と言える。
しかしなぜ「重く」なる?
実は、新型コロナウイルスのワクチン接種がどのようなメカニズムで生理を重くするのかは、明らかにはなっていない。
ひとつの仮説は、子宮の内膜にある組織の修復を助ける免疫細胞への影響によって起こる可能性があり、修復の効果が低いと思われる高齢者では、ワクチン接種後に通常より重い生理が起こりやすくなる、というものだ。