日本人の自己肯定感は本当に低いのか?
また小学4年生から高校2年生を対象とした国立青少年教育振興機構のデータ(2016年)でも同様の傾向が示されており、日本人の自己肯定感は生まれつき低いわけではなく「年齢が上がるにつれて下がる」ことがわかっています。
国立青少年教育振興機構が、世界7カ国の13歳〜29歳の若者を対象に行なった意識調査があります。この中で「私は自分自身に満足している」という質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた割合は、日本は45.8%、 韓国71.5%、米国86.5%でした。この数字だけを切り取れば、日本の若者の「自己肯定感」は低いと言わざるを得ません。
ところが、同調査で「自分は役に立たないと強く感じる」という質問に「そう思う」「どちらかえいえばそう思う」と答えた日本人は47.1%で、アメリカ48.7%、韓国50.3%、イギリス53.4%よりも低い数字なのです。
このふたつの結果を言語化すると「今の自分に満足していないが、自分は役に立つ人間である」と思っている若者が過半数以上いるということです。ここから浮かび上がってくるのは「謙虚で前向きな若者像」ではないでしょうか。日本人の若者の多くは謙遜しているのであって、根っこにある自己肯定感が低いわけではないのです。
国立青少年教育振興機構の調査結果で興味深いのはアメリカの若者です。「私は自分自身に満足している」と答えた若者が86%と非常に高い数字である一方、「自分は役に立たない」と答えた割合が48.7%もいるのです。この二つを言葉にすると「自分は役に立たない人間であるが、今の自分に満足している」という若者が半数近くいるということです。
これを自己肯定感が高いと呼ぶのか、ナルシシスト(Narcissist)と呼ぶのか、その判断は読者にお任せしたいと思います。
小学校時代を通して自己肯定感が下がる理由
さて、日本人の子どもの自己肯定感は(謙遜しているにしても)多くの調査によって小学1年生から中学にかけて下がり続けることがわかっています。なぜ幼児期に高かった自己肯定感が小学校に上がると下がってしまうのか?
その理由として、個性よりも集団を優先する価値観、謙遜文化、そして子どもを過剰にコントロールする毒親などが挙げられています。どれも多かれ少なかれ子どもの自己肯定感を下げる要因ですが、それらに加えて、私は「強みの欠如」を指摘したいと思います。
子どもが小学校に上がると、子どもの生活の中心は「家庭と家族」から「学校と友だち」へと変化します。同時に学校では周りの子どもと比較されることが多くなります。テストの点数、成績表の評価、絵や習字の出来不出来、運動面の能力など、あらゆる場面で「上下優劣」をつけられるようになるのです。
それまで安心できる家庭で家族に守られ「自分は何でもできる!」と信じていた子どもが、小学校という集団社会に参加することで「自分より勉強できる人がたくさんいる」「自分より優れている人がいる」という現実に直面するわけです。
学校は勉強する場所ですから、好き嫌いに関わらず、誰もが主要教科を勉強しなければなりません。しかし、国語、算数、理科、社会、英語の全教科においてトップになれる子はわずか一握りです。大多数の子どもは、多かれ少なかれ、「自分は勉強が苦手だ!」という劣等感を持つわけです。
学校で経験する「劣等体験」から子どもを救い出すには「強み」を伸ばしてあげることが効果的です。そろばんや英会話などの勉強分野でも、スポーツ、音楽、ダンスなどの習い事分野でも構いません。「自分はこれが得意だ!」という強みを持っている子は、多少の劣等体験があっても、自己肯定感が大きく低下することはありません。