のんびりイメージ一変!? オバマも孫文も通った楽園ハワイの「名門お受験」事情
オバマ前大統領の母校、プナホウスクール
ハワイで最も歴史がある私立学校が、オバマ前大統領が通ったプナホウスクールです。創立は1841年。日本では江戸時代、天保の改革が行われた頃ですから、歴史に裏打ちされた伝統の深さが想像できるかと思います。
プナホウスクールは幼稚園から高校までの一貫教育私立校で、大学進学率はほぼ100%。進学先の大学リストにはハーバード大学やイエール大学など世界最難関とされるアイビーリーグ8校を始め、スタンフォード大学、MITなど全米の名門大学が名を連ねます。
プナホウスクールの卒業生には、AOL創業者のスティーブ・ケース、eBay創業者のピエール・オミダイヤなどの実業家、オバマ前大統領などの政治家、ハリウッド俳優、音楽家、アーティスト、宇宙飛行士など、幅広い分野で活躍する著名人が多数います。
またスポーツが非常に盛んで、1968年以降、全てのオリンピックへ国家代表選手を送り出しています。2020年東京オリンピック女子サーフィンで優勝したカリッサ・ムーア選手もプナホウ卒業生です。
プナホウスクールの校風は良くも悪くも「自由」です。生徒の自主性を尊重し、教師が細かく指導したり、指示することはありません。もちろん課外活動や受験のサポート体制は万全ですが、その場合も教師主導でなく、あくまでも生徒の自主的な行動を待つという雰囲気があります。
プナホウスクールの特徴は、学業に秀でた子どもだけでなく、多様な才能を持つ生徒を偏りなく取り込んでいることです。生徒は自分とは異なる価値観に触れることで、互いを尊重し、互いに良い刺激を与え合い、自分たちの特性を高めていくことができます。
クラスメートにオリンピック代表選手や音楽やアートなど、一芸に秀でた仲間がゴロゴロいるわけです。そんな環境に入れば、「自分ももっとがんばらなければ」とごく自然に自分の特性を伸ばそうと努力するようになります。
プナホウスクールの学費(2022年)は、幼稚園で年額28,960ドル(日本円で370万円以上)と高額ですが、それでもニューヨークやカリフォルニアのプレップスクール(相場は年4万ドル以上)に比べると割安と考えられています。
STEAM分野で卓越した人材を輩出、イオラ二スクール
中国革命の父と呼ばれる孫文が通ったのがイオラニスクールです。創立は1863年、日本では尊王攘夷派の志士たちが池田屋で新鮮組によって弾圧された年です。イオラニスクールもハワイで最も伝統ある幼稚園から高校までの一貫教育私立校であり、プナホウスクールとはあらゆる分野でライバル関係にあります。
プナホウスクールが全日制のみ(生徒が家から通う)であるのに対して、イオラニスクールは全寮制と全日制の二つの通学形態があります。全寮制プログラムは海外からの生徒を広く受け入れており、国際的な雰囲気があります。
イオラニスクールのモットーは「ワンチーム」。世界中から集まってきた学生が互いに助け合い、支え合い、一つのチームとして全体を高めていく。皆が一丸となって物事に取り組むことで、個々の能力を超える力が発揮できる。イオラニスクールには日本と共通する「助け合いの精神」が感じられます。
イオラニスクールの特徴は理数系に強い生徒が多いことです。算数の技能を競い合うオアフ島のマスリーグでは1993年以来ずっと優勝し続けています。科学の技能を競い合うサイエンスオリンピアドでは、2016年に全米優勝を果たしています。またロボティックスが盛んで世界大会にも出場しています。
今話題のSTEAM教育も積極的に取り入れており、2012年にはSTEAM教育の拠点として最新の設備を備えたサリバンセンターを建設。21世紀の人材に不可欠なコンピューター技術、エンジニアリング、デザインなどを学ぶことができます。
イオラニスクールの学費(2022年)は、幼稚園で年額26,150ドル(約340万円)です。全寮制は9年生(高校1年)以上が対象で、年額61,200ドル(約800万円)です。ハワイのプレップスクールの学費の高さからもアメリカの経済格差(教育格差)の拡大が想像できると思います。