日本のしつけで軽視される「コミュニケーション力」は教えなければ身につかない技術
子どもとのコミュニケーション力を伸ばす環境作り
【集団の習い事に参加させる】
日本人の子どもは、同年代の気の合う仲間とだけ親密に関わる傾向があります。そのため興味や関心、世代の違いを越えてコミュニケーションすることを苦手と感じ、見知らぬ人との交流を避けようとします。将来子どもがそうならないようにするには、「集団の習い事」に参加させることが一番です。
特に、球技、ダンス、演劇など、身体を動かすものが重要です(大人もコミュニケーション力が飛躍的に伸びます)。他の子どもと一緒に身体を動かす活動を通して意思疎通を密にしたり、共感したり、伝え合う力を伸ばすことができます。
日本人は子どもの習い事に、水泳、バレエ、ピアノなど、個人競技や一人で練習するものを選ぶ傾向がありますが、コミュニケーション力を伸ばすことを考えたら、「集団で行なう活動」に参加させることがベストです。
【世代を超えた交流の機会を与える】
少し前までは日本でも世代を超えた交流がごくあたりまえに行われていました。しかし、今は少子化により子どもが減り、都市化により地域社会とのつながりは薄れ、情報化によって人と直接会わなくても大抵のことができる世の中になりました。子どもが幅広い人と交流する機会がなくなってしまったのです。
今の時代は、親が交流の場を作ってあげなければなりません。まずは地域社会の活動に子どもを参加させてみましょう。町内会の仕事、ゴミ収集所の清掃、町内の美化活動、お祭りや文化イベントの手伝いなどに子どもを連れていき、地域の人と関わる機会を持たせるのです。
子どもが手伝いをしていると、「◯◯ちゃんはえらいね」「◯◯くんがんばっているね」と大人が声をかけてくれます。このような大人との何気ない対話が子どもの自信を大きくし、コミュニケーション力を伸ばしてくれます。
また地域の伝統芸能、祭事、行事などを子どもたちに継承する場があれば、参加させてあげましょう。世代を超えた交流が体験できることはもちろん、生まれ育った土地の文化や歴史への理解が深まり、アイデンティティ形成をスムーズにしてくれます。
【サマーキャンプに参加させる】
アメリカの子どもたちの多くは夏休みになると「サマーキャンプ」に参加します。サマーキャンプとは、アメリカ中から集まってきた子どもたちが、大自然の中で数週間、集団生活を送る野外アクティビティです。
サマーキャンプの多くは、テレビもゲームもインターネットも禁止です。この環境を楽しむためには、友だちとトランプをしたり、自然の中で遊んだり、新しい遊びを発明していかねばなりません。つまり、必然的に「人と関わること」が必要になってくるのです。
サマーキャンプへの参加を通して得られる最大の恩恵は、「新たな友との出会い」です。様々な地域から集まってきた仲間と交流することで、異なる価値観と出会い、コミュニケーションの幅を広げてくれます。これが子どもにとっての財産になります。
最近は日本でも夏休みにサマーキャンプ、山村留学、自然体験キャンプなどが開催されるようになりました。インターネットで検索をかけてみてください。たくさんのプログラムが見つかるはずです。親から離れ、普段とは違う環境で新しい仲間と過ごす経験は、子どものコミュニケーション力を鍛え、子どもを一回り大きく成長させてくれます。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。