日本のしつけで軽視される「コミュニケーション力」は教えなければ身につかない技術
たとえば、「相手の目を見て笑顔であいさつする」は世界標準の人付き合いのルールですが、これを子どもに教えている親は少ないのではないでしょうか。海外の多くの国では、道行く人が笑顔で気さくに「ハロー」と声をかけてきます。これは、ムスッとしていると無用なトラブルに巻き込まれる原因にもなりかねないので、笑顔を見せて「自分はいい人ですよ!」とアピールしているのです。
この傾向は、さまざまな文化・民族が集まる国ほど顕著で、ソーシャルメディアにアップされた1億5千万枚の写真を分析した所、笑顔が一番多い国民は「ブラジル人」でした。ブラジルは、多文化・多民族が集まるグローバル化の最前線をいく国です(*ちなみに、この調査で日本人は「最下位」でした)。
笑顔ができない人は、コミュニケーションの輪に入れてもらえません。輪に入れなければ、人間関係がつくれません。つまり、笑顔一つできるかできないかで、人間関係、子どもの場合には人格形成にも大きな影響が出てくるのです。
子どもを一人前扱いすると自立心に火がつく
コミュニケーション力の育成を難しく考えることはありません。明るく元気にあいさつする、相手の目を見て話をする、人の話を最後まで聞く、といった人付き合いのルールを「大人が」子どもに教えてあげればよいのです。
多人種・多民族・多文化国家であるアメリカでは、コミュニケーションを親が子どもに教えることはもちろん、子どもを取り巻く大人たちが先生となって「人付き合いの実践訓練」をしている場面に遭遇します。
たとえば誕生日パーティーで大人と子どもが集まった時、大人が積極的に子どもに混ざって会話を楽しんでいます。
「こんにちはザックさん、最近サッカーの調子はどうですか?」と、まるで大人の友人と接するように小学生に声をかけます。子どもは大人から一人前に扱われると嬉しいのです。そして一人前の大人として会話しようと言葉を選び、丁寧な表現を意識するようになります。
「まあまあです。あいにく先日の試合は負けてしまいましたが。次は勝てるようにがんばって練習しています。リチャードおじさんはゴルフの腕前は上がりましたか?」なんて会話が、大人と子どもの間で交わされています。
子どもを「一人前扱い」してあげると自立心に火がつくのです。そして大人のように、論理的に言葉を積み上げてコミュニケーションをとろうとします。すると本当に大人相手に会話が成立するようになっていくのです。
初対面の人とうまく打ち解けられない、年上や異性相手にしどろもどろになってしまう、そんな子どもはコミュニケーションの練習が足りないだけです。親が家庭で基本を教えあげることに加えて、多様な人とコミュニケーションできる場を作ってあげてください。