女性上司からのフィードバックはムカつく 20代従業員は差別しないが...
改善策は?
近年、管理職の女性に対する差別をなくそうとする動きが欧米企業を中心に広まっている。
特にヨーロッパでは、起業する場合、ボードメンバーに積極的に女性を含める。資金調達において、多様性が重視されるポイントでもあるからだ。ヨーロッパとアメリカのB2Bユニコーン企業の女性リーダー比率は21%。昨年夏には、イギリスが上場企業に対し「取締役の4割を女性」にするよう多様性確保を促す新たな指針案を公表した。
一方の日本は、2021年7月末時点における東証一部上場企業の女性役員数は、前年比527人増の3055人。女性役員割合は7.5%。9年間で約4.8倍に増えたものの、諸外国に比べて低い水準にとどまっている。
もっと言えば、これは上層部の話。グループリーダー、主任、課長など、取締役でない女性従業員を取り巻く環境はより甘くない。
アベル博士の研究の成果を、古い体質の職場環境にどの程度まで落とし込み、一般化できるかはまだ未知数だ。数値目標を達成して、ダイバーシティを謳い、イメージアップを狙うポーズだけでは内実は伴わない。
女性管理職への風当たりを改善するために、「フィードバックコーチ」を導入する企業もある。フィードバックをする人の身元ではなく、フィードバックの内容に注目するよう従業員に進言している。また、従業員が偏見を持つように感じたら、その事実を知らせることで、従業員の行動に影響を与える可能性があるという証拠もある。
他の研究では、ポジティブな評価や推薦状など、リーダーシップのある女性の資格、つまりは一目瞭然の高いスペックを強調することが、効果的な対策になる可能性があると示唆されている。
アベル博士曰く、「私の研究では、女性上司からのフィードバックを受けた従業員の否定的な反応は、若い人ほど低く、20代では全く見られません」。若手社員が年齢を重ねるごとに差別をする可能性も否めないが、世代交代が進んで、管理職の女性に対する差別がなくなるという希望的観測を抱いている。
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