人生で「自分が納得できる答えを導き出す」ために必要なこと
フィンランドに限らず、アクティブラーニングが普及している欧米の学校では「問い」を重視します。先生の仕事は生徒に「質問」することです。「なぜそう考えるのか?」「根拠は何か?」と繰り返し質問します。生徒は常に頭をフル活動させて、自分の思考の根拠について必死で考え、自分なりの答えを導き出さなければなりません。
自分の意欲で学習に向き合い、自分に「問い」を重ねて、自分なりの答えを導き出していく。このプロセスを繰り返すことで、自分自身についての理解が深まり、アイデンティティが確立されていくのです。
アイデンティティの確立とは、「自分は誰で、どう生きたいのか」という人生の指針をハッキリと決めていく力です。これを確立するには、子どもを取り巻く人たちが「なぜか?」「本心か?」「他に考えはないのか?」と「問い」続けることが必要です。
親子の対話に「問い」を増やす
思考力は、子どもが勝手に身につけていくものではなく、多くの場合、家庭の中で育てられていきます。特に重要なのが親子間で交わされるコミュニケーションです。優秀な子どもが育つ家庭ではさまざまな「問い」が投げかけられ、子どもは小さな時から「自分で考える習慣」を身につけているのです。
・小さな選択をさせ、「YES or NO」をハッキリさせる
・選択の際には、論理的に理由を考えさせる
・一つの角度からではなく、多面的な立場から物事を考えさせる
・「わからないこと」を明確にして、追求させる
・自分の本心と向き合って選択をさせる
といった訓練をしていくことで、自分の意見を持つ力、分析する力、発想する力、問題を解決する力がついていきます。子育て上手な親は、子どもの発想を刺激する質問をして子どもが楽しんで考えられるように仕向けているのです。
さらにコミュニケーションだけでなく、「読書」などを通して身につく「読解力」「言語力」「書く力」や「知識」などにより、考える力はさらに洗練されていきます。
その結果、「テレビやネットでこう言っているから」「権威のある人がそう言っているから」などではなく、事実や根拠に基づいて、自分の明確な意思で物事を決め、常識の枠にとらわれず自由に発想していく力が養われていくのです。
思考を言葉で表現する力は食卓で育つ
食卓は子どもの考える力を育てる最適の場です。フランス人は食事時間が長いことで有名ですが、その目的は、家族のコミュニケーションを密にし、お互いに何でも話し合える信頼関係を確立することにあります。
家族全員が食卓で顔を合わせて、食事を食べながらその日にあった出来事を話し合うのはフランス文化の一部です。フランス人はディベート好きで、自分の考えを曲げないことで有名ですが、その気質は食事中の会話によって育てられるといっても過言ではありません。
平日は家族全員が揃うことが難しいという場合は、週末だけでも一緒に食事をとることをルールにするとよいでしょう。食事中はテレビを消して、その週にあった出来事を話し合います。それだけで家族関係が目に見えて良好になります。
子どもとの雑談の中で、親が「なぜ?」「本当?」「どうして?」「どんな風に?」という「問い」を増やすことで、子どもは自分の思考について深く考えるようになります。思考力の強い子どもは、多くの場合、親子の会話によって当意即妙の発想力、言語力を獲得しているのです。
食事中の会話に、親の仕事の話、政治や経済の話、環境や国際問題など、学校では聞くことのできないトピックが多いほど、子どもはたくさんの知識を吸収し、様々な事柄について「考える力」を伸ばしていくことができます。
親子の会話で重要なのが、子どもの考えを尊重することです。多くの親が子どもの意見を否定したり、間違いを正したり、親の考えを押しつけがちですが、これを繰り返していると、子どもは親の話に聞く耳を持たなくなります。