最新記事

ドキュメンタリー

誤解されてきた「R&Bの女王」 ティナ・ターナーの実像とは

New Tina Turner Doc Is a Must-Watch

2021年04月22日(木)18時12分
ジャック・ハミルトン
ティナ・ターナー

ティナ・ターナーの素晴らしさはステージを見れば一目瞭然(新作のワンシーン、1976年) COURTESY OF RHONDA GRAAM/HBOーSLATE

<貧しい幼少期からデビュー、夫の暴力と離婚、奇跡のカムバックまで「R&Bの女王」の新しい自伝的映画は必見>

世界屈指の人気ライブパフォーマーとして人生の大半を過ごしてきたティナ・ターナー。だが奇妙なことに、そのの実像は一般のファンに必ずしも正確に伝わっていなかったような気がする。

本人のせいではない。彼女はこれまでに自伝2冊と自伝的要素の強い自己啓発書1冊を書き、ハリウッド映画やブロードウェイミュージカルの題材となり、今も世界で最も注目されるインタビュー対象の1人であり続けている。

それでも長い間、ポップカルチャーの世界に流布する彼女の伝説には、どこか違和感があった。キャリアの初期は1人のティナではなく、アイク&ティナ・ターナーというR&Bの「ファーストカップル」として扱われた。

1980年代には夫アイクと別れ、ひどい虐待を受けていたと告白。ソロ歌手として並外れたキャリアを築き、逆境に立ち向かう勇気と強さを持つスーパーヒーローとして称賛されたが、この成功も公私にわたるアイクとの関係を強調し過ぎる語り口に拍車を掛けた面があった。93年の自伝的映画『TINA ティナ』はその典型だろう。

だがケーブルテレビ局HBOの素晴らしい新作ドキュメンタリー『ティナ』(監督はダン・リンゼーとT・J・マーティン)によって、この描写の偏りがようやく是正されたような気がする。この作品は、筆者が近年見た中で最高の音楽ドキュメンタリーの1つだ。描写の率直さと温かさに何度も心を奪われた。

ドキュメンタリーの形式という点では、決して画期的な作品ではない。映画はほぼ時系列に沿って進み、過去の記録映像とティナ自身を含むインタビューで構成されているのもスタンダードだ。

しかし、この作品には独特の安定感と雄弁さがある。彼女の魅力が何であるかを的確に把握しているので、センセーショナルな印象を与えることなく、深い洞察と親しみやすさがさりげなく同居する力作に仕上がっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほく

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ

ワールド

香港小売売上高、12月は前年比6.6%増 8カ月連

ビジネス

フジHD、旧村上系が大規模買付取り下げ 外部資本導
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    脳裏にこびりつく生々しい証言 少女を食い物にした…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 5

    シャーロット王女が放つ「ただならぬオーラ」にルイ…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    シャーロット王女が放つ「ただならぬオーラ」にルイ…

  • 3

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 4

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプの帝国

特集:トランプの帝国

2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える