最新記事

教育

日本は最低レベル──世界で進む「STEM教育」の重要性

2021年03月10日(水)11時05分
船津徹

AleksandarNakic-iStock

<アメリカでは2011年にオバマ大統領が一般教書演説で優先課題に挙げるなど世界で注目されるSTEM教育。ベトナムやアフリカの新興国も力を入れる一方、日本は大きく出遅れています。ITなしでは成り立たない時代を生き抜くために必要な力とは?>

今、アメリカが国家戦略として推進しているのが「STEM(ステム)教育」です。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Math(数学)の略で、これからの社会で最も成長が著しい分野として人材育成が急務となっています。

STEM教育最大の利点は、社会で必要とされる実用的な技能を、教科の枠を越えて学習できることです。従来の学校カリキュラムでは算数は算数だけ、理科は理科だけというように縦割りの教科領域しか学ぶことができませんでした。

しかしSTEM教育を取り入れることで、国語、算数、理科、社会、図画工作、コンピューターなどの教科で得た知識と技能を総動員して、問題解決力や課題を発見する力など、社会のニーズに密着した実用的な力を鍛えることができます。

集団の中でそれぞれの技能を活かす

STEM教育と聞くと「理数系の難しい学問」という印象を持つかもしれませんが、コンピューターサイエンスやエンジニアリングへの関心を高め、ITやハイテク関連の人材育成につなげることが目的です。

アメリカではSTEM教育は小学校からスタートします。多くの小学校がロボティックスやレゴリーグなど「グループ単位」でSTEM技術を競い合わせる楽しいアクティビティを取り入れています。子どもたちはデザイン、設計、制作、プログラミングなど、ロボット制作の工程を仲間と一緒に学習することができます。

グループ単位でSTEMに取り組む利点は、子どもたち一人ひとりの「強み」を活かせることです。絵が得意な生徒はデザイン担当、コンピューターが得意な生徒はプログラミング担当、手先が器用な生徒は組み立て担当、コミュニケーション力が高い生徒はチームのマネージメント役というように、子どもたちの特性を活かしながら、共通のゴールに向かって協力し合う経験を積むことができます。

さらに小学生からSTEM教育を導入することで、主体的に学ぶ力、問題解決能力、質問喚起力、創造力、コミュニケーション力など、実社会で使える技能を身につけることができます。

ロボット制作やプログラミングの過程では思い通りにいかない問題が多く生じます。それらをいかにチームの中で解決していくのか、問題点を発見して、解決方法を模索していくチームワークを学ぶことができます。

ロボティックスやプログラミングにように根気と精度を要する作業は多くの日本人が得意とする分野です。学校教育においてテクノロジーへの興味を引き出す仕組みを導入することができれば、STEM分野で突き抜ける人材育成へとつながることが期待できます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「見せたら駄目」──なぜ女性の「バストトップ」を社…

  • 5

    「生で食べればいい」にちょっと待った! 注目のブ…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「見せたら駄目」──なぜ女性の「バストトップ」を社…

  • 5

    3.11から9年、福島の避難指示区域は野生動物の楽園に

  • 1

    「エプスタインに襲われた過去」と向き合って声を上…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 4

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:高市早苗研究

特集:高市早苗研究

2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える