日本は最低レベル──世界で進む「STEM教育」の重要性
日本のSTEM教育は世界で最低レベル
日本の学校教育でもプログラミング教育が必修化され、STEM教育をカリキュラムに導入する動きが進んでいます。しかし世界の潮流と比較すると、日本のSTEM教育は大きく出遅れていると言えます。
2012年にOECDが72カ国(または地域)の15歳の生徒に対して行った調査によると、日本はインターネットとコンピューターの学校内外での使用について、ほとんどの項目において世界平均を下回っていることが分かりました。
中でも「学校外でコンピューターを使って宿題をする」と答えた割合はデンマーク、オーストラリア、メキシコの生徒が90%以上だった一方で、日本の生徒はわずか9%で、調査国中で他を大きく引き離して最下位でした。
学校教育においてコンピューター使用(宿題や課題をコンピューターで行い提出すること)がほとんど要求されないことが要因ですが、家庭においても子どもがコンピューターを使う機会を増やし、ITリタラシーを高める努力が必要です。
コンピューター教育は小学校低学年からスタートすべきだと個人的には考えています。子ども専用のパソコン(中古で十分)を与えてタイピングや基本ソフトウェアの使い方を小学校時代に身につけさせることで「コンピューターは難しい!」という抵抗感を取り除くことができます。
またコンピューターを使って音楽を作ったり、動画を編集したり、アニメを作ったり、ゲームを作ったりという主体的、かつ、クリエイティブな使い方を経験させることでコンピューターサイエンスを身近に感じさせることができます。
なぜSTEM教育が必要なのか?
経済産業省は「新産業構造ビジョン」の中で、2030年までのさまざまな職業における構造の変化を予想しています。現在は昔からある仕事と新しい仕事が入れ替わる過渡期です。仕事が変わっていくのですから、それを支える教育も変わっていかなければなりません。
これからの社会でより重要となるスキルは、主体性を持って問題解決していく力や新しいシステムを創造していく力です。テクノロジーに使われる側からテクノロジーを使う側に回らなければ、変わりゆく社会の中で生き残っていくことはできません。
今までゲームをする側であった子どもが、STEM教育を通してゲームを作る経験をすることによって、作る側の思考を身につけることができます。人が作ったものを使って楽しむことにとどまらず、自分が人を楽しませるモノや社会に役立つモノを作るにはどうしたらいいのか?そのようなクリエイティブな視点はこれからの社会で活躍する人材には欠かせません。
また小学生からSTEM教育を導入することによって、子どもの科学分野への興味を喚起できると同時に、主体的に考え、行動する力を鍛えることができます。これまでの日本の学校教育は、先生の講義を聞く「受身」の授業形態がほとんどですが、STEM教育では生徒が「主体的」に授業に参加し、問題解決する態度が要求されます。
新型コロナウィルスによって人々の生活が一変しました。こんな時こそSTEM教育を導入するチャンスです。安全に学校で過ごすにはどんな工夫が必要か、衛生管理ができる発明をしてみよう、ソーシャルディスタンスを保ちつつコミュニケーションが取れる方法を考えてみようなど、生活に密着した問題について考えさせることで、主体的に問題解決していく力を育てることができます。