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ドキュメンタリー

誰が歌姫ブリトニーを追い詰めたのか

A Victim of Misogyny

2021年03月31日(水)18時30分
ウィラ・パスキン
ブリトニー・スピアーズ(2008年)

2008年に判断力不足と裁定され、一時期は子供との面会権も失ったスピアーズ。今も生活を後見人の父親に支配されている FX

<女性蔑視とタブロイドの暴走という視点からスターの苦難を読み解くドキュメンタリーが登場>

ブリトニー・スピアーズの「ウップス!...アイ・ディド・イット・アゲイン」(「やだ、またやっちゃった」の意)ほど、人を食った曲名もない。無邪気な顔を装いつつ、スピアーズは歌の中で、ヒットチャートも男も思いのままだと豪語していた。

2000年当時、彼女は音楽界に君臨するスターであり、このシングルも売れに売れた。とぼけたタイトルにだまされてはいけない。この頃のスピアーズの辞書に「偶然」や「うっかり」はなかった。

だが米Huluで公開されたニューヨーク・タイムズ紙製作のドキュメンタリー『フレーミング・ブリトニー・スピアーズ(ブリトニー・スピアーズをおとしめる)』が見せるのは、計算や作為とは無縁の天才アーティストというスピアーズ像だ。

39歳の極めて有能な職業人である今も、スピアーズは成年後見人制度に自由を制限されている。資産を管理するのは父親で、彼を後見人から外してほしいというスピアーズの訴えは裁判所に退けられた。

スピアーズを苦境に追い込んだのはミソジニー(女性蔑視)とタブロイド紙の悪質な取材攻勢だったという視点から、ドキュメンタリーは後見人問題に焦点を当てる。

スピアーズは2007年に精神の安定を崩し、頭を丸刈りにしたり、パパラッチに暴力を振るったりと騒動を起こした。2008年には判断力を疑われ、裁判所の裁定で後見人が付いた。こうした凋落は好色な視線と容赦ないバッシングにさらされた結果だとする番組の説には、うなずくしかない。

オーディション番組『スター・サーチ』で年配の男性司会者が10歳のスピアーズに恋人になってほしいと言って以来、メディアは彼女の私生活を執拗に追い回した。1990年代末にスピアーズが10代半ばでブレイクすると、「まだ処女なの?」といった不適切な質問を山ほど浴びせた。

好奇の目がバッシングに変わったのは同じくアイドルだった恋人ジャスティン・ティンバーレイクとの破局がきっかけだと、番組は示している。別れの原因がスピアーズの浮気だったとほのめかした彼に、世間は一方的に同情した。

以降、取材攻勢は一段と苛烈になった。特にスピアーズが2人の子供を出産してからは、タブロイドは逃げ場のない監視が精神状態を悪化させていることを棚に上げ、彼女を愚かな失態を重ねる救いようのない女性に仕立てた。

この虐待に近い扱いには確かにミソジニーがうかがえるが、階級差別も見て取れる。

スピアーズがティンバーレイクと別れると、タブロイドはアメリカらしい健全な少女が貧乏白人の本性を現したとセンセーショナルに書き立てた。スエット姿でファストフードのドライブスルーに並ぶスピアーズや、ドラッグストアでポテトチップを買うあかじみた髪のスピアーズの写真をでかでかと掲載した。

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