日本人に足りない「思考技術」を育てる方法は?
「誰が書いている情報なのか」「情報発信者の背景や経歴は」「その情報は事実なのか、著者の意見なのか」「何を根拠にしているのか」「何を意図しているのか」「著者や媒体に偏見がないか」など、情報の本質について「検証」する方法を子どもに教えてあげてください。
子どもにクリティカルシンキングを教える基本は、「本当」「なぜ」「誰が言っているの」と、「問い」続けることです。自分の考えを言語化し、他者に伝える経験を積ませることで、安易な思考で答えを出すのでなく、立ち止まって冷静に考える習慣が身についていきます。
クリティカルシンキングを教える時に起こりがちなミスが「斜に構えすぎること」です。「絶対にだまされないぞ!」「インターネットはウソばかり!」と、批判することを前提に情報に接していると、結果として大切な情報を見落とすことになります。
クリティカルシンキングは「あら探しの思考」や「あげ足取りの思考」ではありません。課題や目的に応じて情報を選択し、自分の学びや生活に活かすためのポジティブな思考技術です。情報の本質を見極め、積極的に活用する習慣を持つことは、将来、自分の進路やキャリアや生き方を賢く選択していくことにつながります。
親子でディスカッションをしてみる
新聞やインターネットの記事を親子で読み、ディスカッションをしてみましょう。クリティカルシンキングを鍛えるには、思考を言語化する訓練が最も効果的です。子どもは子どもなりの意見を持っています。しかしその思いを人に伝える機会がないと、自分の思考について検証することも、自分の思い込みに気づくことも、ロジカルに説明することもできません。
子どもと意見交換する時は、頭ごなしに否定したり、話をさえぎったり、親の意見を押し付けてはいけません。どんなに突拍子もない意見であっても、子どもの考えを尊重し「なぜそう思うの」「本当にあなたの考えなの」「他に考えはないの」と親は聞き手に徹してください。
親子のディスカッションは、正解がなく、楽しいテーマから入るとスムーズです。たとえば「宇宙人は存在するのか」「死後の世界はあるのか」「超能力は実在するのか」というインターネット記事を親子で読み、クリティカルに意見交換してみてください。
また子どもにとって身近な話題、たとえば「学校に制服は必要か」「学校でコロナウィルスに感染しない方法は」「なぜ勉強しなければいけないのか」「いじめをなくす方法は」というテーマを振ると、面白がって話に乗ってきてくれます。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。
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