日本人に足りない「思考技術」を育てる方法は?
米小学校に学ぶクリティカルシンキングの教え方
アメリカの学校では、国語(英語)、算数、理科、社会、全ての教科指導にクリティカルシンキングが取り入れられています。先生が一方的に教科書知識を講義する日本の授業スタイルとは異なり、アメリカでは生徒を能動的にディスカッションに参加させ、気づきと理解を引き出していく授業スタイルが主流です。
小学4年生の理科の授業を覗いてみましょう。セキツイ動物について勉強しています。「ハ虫類と両生類、どこが似ているのか教えてください」先生が質問すると、子どもたちが一斉に手をあげます。
「どちらもたまごを生む」「どちらも肺で呼吸する」「どっちも気持ち悪い!」「どちらにも目がある」「どちらにも手足がある」
生徒たちの自由な発言に対して先生は問いを重ねていきます。「本当にどちらもたまごを生みますか?」「本当に手足がありますか?」「本当に気持ち悪いですか?」
すると生徒たちは「かえるには手足があるけど...へびには手も足もない!」「ボクはトカゲは可愛いと思う!気持ち悪いというのは主観です!」というように、直感的に答えに飛びつくのでなく、一度立ち止まって自分の思考について考え直す習慣を身につけることができます。
アメリカの学校で生徒の授業参加が重視されるのもクリティカルシンキングを鍛えるためです。頭の中にぼんやりと存在している思考を言語化し、他者に伝えることによって「クリティカルに考え、論理的に伝えるプロセス」を訓練しているのです。また他者の多様な思考に触れることによって、自分の思考の偏りや思い込みに気づくことができます。
先生の仕事は「答え」を教えることではありません。生徒がクリティカルに考えられるように「問い」を重ねることです。「なぜ?」「本当?」「どうして?」「根拠は?」と問い続けることで、生徒は「自分の思考を思考する習慣」を身につけることができます。
クリティカルシンキングを教科学習に取り入れることで、機械的に知識を記憶するという受動的な学びから、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決していく「能動的な学び」を実現することができるのです。
クリティカルに考える力が不可欠
高度情報化社会で賢く生きていくには、自分にとって必要な情報を取捨選択し、吟味し、活用する「情報活用能力」が要求されます。新型コロナウィルスによって学校における情報メディアの拡充が急務になってきていますが、その一方で、子どもたちが氾濫する情報に流されてしまうことが危惧されています。
インターネットの世界はクリティカルシンキングを鍛える最適の場です。情報を鵜呑みにせず、正しい判断ができるように、インターネットに潜む「ワナ」や「ウソ」について親子で話し合う機会を持つことをお勧めします。