一斉休校から3週間のスイス、学校への評価は上々。日本人女性が見た「がんばる先生たち」
日本の先生たちは忙しすぎる
日本では、感染状況に応じ、地域ごとの判断で、新学期から学校再開するか休校継続するかを決めるよう政府から提言があった。感染は東京や大阪も含めさらに拡大する可能性はあり、再開はまだ早いという意見もかなりあると思う。
もう少し、一斉休校にしてはどうなのか。授業の遅れの心配もあるはずだが、スイスの多くの学校で急きょ対応したように、オンラインを使って子どもの学びをサポートできないのか(すでに、そうした対応をした日本の学校もあるだろう)。もちろん、家にオンラインの環境が整っていない子供もいるだろうから、完璧には実施できないとはいってもだ。
だが、きっと非現実的なことなのだろう。日本の教員は、世界的に見て、とても忙しいことは知られている。子供の学びを第一に急に新しいことを準備しようといっても、時間があまりないだろう。今回の休校期間も、決して、ひまではなかったというニュースをいくつも目にした。
ちなみに、スイスでは基本的に給食がないから、教員は給食指導をする必要はない。幼稚園・小・中学校のランチは家庭の責任で、子供は帰宅して食事する。学童サービス(教員ではないスタッフを雇う)で給食をとる子供は少数だ。だから、雅代さんも、普段もいまの休校期間も、子供たちのランチを毎日用意する。
長期戦覚悟で、学校と二人三脚で
休校で2週間が経ち、雅代さんの子供たちがストレスを感じている様子は、はっきりとは見受けられないという。雅代さんも「日々、ヨガや筋肉トレーニングをして心を落ち着かせるようにしているので、いまはストレスを感じていません」とのこと。春休みは予定をすべてキャンセルし、家で過ごす。
「春休みに入ったら、ホームスクールはありません。休暇中の宿題はないし、思い切りスポーツができないし、それを考えると憂鬱です。新型コロナウイルス関係で少しでも明るいニュースがあれば、気が晴れるでしょうけれど。春休み後も休校なら、子供たちはやる気をもって課題に取り組んで、メリハリのある生活をまた送れると思います。長期化すると子供に疲れが出るかもしれません。でも学校側が懸命なのですから、親たちもがんばりどきです。先生たちには、本当に頭が下がります」
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」理事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com
2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。