苦労人シャネルと生まれながらの貴族のライバル、そして戦争
Chanel and Schiaparelli: Rivalry on the Riviera
そんなシャネルも、37年にはスキャパレリに押され気味になっていた。マン・レイやマルセル・デュシャンの前衛芸術に影響されたスキャパレリのデザインを、世間は最先端ともてはやした。芸術家のジャン・コクトーや昔の恋人ダリを含むシャネルの取り巻きの多くが、スキャパレリとも親しくしていた。
37年はスキャパレリが「ロブスター・ドレス」を発表した年でもある。白いオーガンジーにダリが赤いロブスターを描いたドレスは、同年ウィンザー公爵夫人となったウォリス・ウォーフィールド・シンプソンがヴォーグ誌でまとい、一躍有名になった。
公の場では嫌み交じりの社交辞令を交わした2人だが、陰でシャネルはスキャパレリを「あのデザイナー気取り」と見下していたという。
だが、シャネルがやられっ放しでいるわけがない。
大戦前夜の39年春、シャネルはリビエラでコレクションを発表した。黒やベージュが基調のシンプルなシルエットから一歩踏み出してフランス国旗の赤白青を取り入れ、レースの房飾りをあしらった「ジプシー・ドレス」でスキャパレリに対抗した。
その夏は、戦前のリビエラがリビエラらしく浮かれ騒いだ最後の夏だった。花火が上がり舞踏会やコンサートが催され、人々は9月に開幕予定の第1回カンヌ国際映画祭に熱い期待を寄せていた。
町には有名人が勢ぞろいした。マレーネ・ディートリヒは夫と娘、愛人を伴って到着した。ウィンザー公爵夫妻や作家のサマセット・モームが宴会を開き、ウィンストン・チャーチルはカジノでギャンブルに精を出した。シャネルも別荘に滞在していた。
70歳から驚異の再出発
しかし、9月3日に第二次大戦が勃発。フランスではスキャパレリをはじめ多くのデザイナーが商売を続けたが、シャネルは「一つの時代が終わった気がする」と言って、さっさと店を閉めた。
シャネルがオートクチュールのサロンを再開したのは、14年後の53年。翌54年には、70歳で新しいコレクションを発表した。皮肉な巡り合わせと言うべきか、スキャパレリはこの年、店を閉じている。
借金漬けだったライバルと対照的に、シャネルはここから再び快進撃を開始する。55年には代表作となるチェーンバッグ、56年にはツイードのスーツを発表した。
ディートリヒから再出発を決めた理由を尋ねられると、こう答えた。「退屈で死にそうだったから」
かつて「仕事は私の麻薬」と言ったことのあるシャネルらしい言葉だった。

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