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15%の間違いをするときが最も効果的に学べる その理由は?

2019年11月12日(火)16時15分
松丸さとみ

「100%」の完璧を求めるのもよくありません...... mikanaka-iStock

<米アリゾナ大学の研究者が「もっとも効率よく学ぶには、どのくらい失敗するのが最適なのか?」を探る調査を行った......>

機械学習ではじき出した「85%ルール」

何かを学ぶ時、失敗はつきものだ。しかし失敗ばかりだと心が折れてしまうし、人はやはり「100%」の完璧を求めてしまう。そこで、米アリゾナ大学のロバート・ウィルソン准教授のチームは、「もっとも効率よく学ぶには、どのくらい失敗するのが最適なのか?」を探る調査を行った。ウィルソン准教授によると、学ぶ上で最適な「失敗率」は15%だという。調査の結果は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに「最適学習の85%ルール」として掲載されている。

アリゾナ大学の発表文によると、ウィルソン准教授のチームは、コンピューターにシンプルなタスクを教えるという機械学習を、複数のパターンで行った。例えば、さまざまな模様を2つのカテゴリーに分類するといった内容や、手書きの数字が書かれた写真を奇数と偶数に分ける、または数の大小に分ける、といった内容だ。

その結果、85%の割合でうまく分類できたときに、コンピューターはもっとも速く学習したという。「このような2択のタスクにおいては、エラー率15%、または正解率85%のときに、学習率が最大になる」とウィルソン准教授は話した。

同准教授はまた、動物の学習においても、85%ルールは当てはまったと説明している。

85%ルールが最適なのは知覚学習

人間で考えると、85%ルールが当てはまるのは「知覚学習」のときだという。経験と実例を重ねて徐々に学んでいくプロセスだ。ウィルソン准教授は、「放射線技師がレントゲン写真を見て、腫瘍かそうでないかを見分けられるようになる」までの学習を例として挙げている。

放射線技師は、実際のレントゲン写真をたくさん見ていくことで、腫瘍がどれかを正確に当てられるようになっていく。精度を高めるには、「経験」と「実例」が必要だ。

しかしこのプロセスが、「簡単すぎると毎回正解してしまい、そこから学べるものはない。正解率50%で難しすぎても、新たに学ぶことができなくなる。ちょうどこの真ん中くらいの確率は、それぞれの実例からもっとも多くの情報を得られる『スイート・スポット』になり得る」とウィルソン准教授は話している。

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