「私を犯した夫を訴える...」 夫婦間レイプとの向き合い方をフランスと日本から考える
レイプ被害者という自覚がないことも(写真はイメージ) 4x6-iStock
<配偶者から性暴力を受ける「夫婦間レイプ」。パリ在住ジャーナリストが現地DV被害者女性のディスカッショングループに参加。また、日仏の弁護士が「夫婦間レイプ」にまつわる法律を比較する>
妻や夫から、合意なく性的な行為を強要される「夫婦間レイプ」。一般的に「夫婦」という関係にも「レイプが成立する」という認知が低く、実際に「自分が配偶者からのレイプの被害者となっていること」に気づいていない人も少なくない。
内閣府による調査では、異性から無理矢理性交をされた女性(117人)のうち、19.7%が配偶者・元配偶者からの被害だったと回答。筆者が拠点とするフランスでは、内務省の報告(2017年度)によると性暴力や性的攻撃の被害者のうち約3割の女性が配偶者、又は元配偶者からによる被害だったと挙げている。
同じ屋根の下で暮らす夫婦という間柄だからこそ、「曖昧」な事件となりやすく、フランスでも日本でも「タブー」となっている夫婦間レイプ。今後、どのようにこの「タブー」に向き合っていけばいいのか――。
パリでそのヒントを求めるため、DV(配偶者や恋人からの暴力)を受けた女性の状況改善を支援する団体「ELLE'S IMAGINE'NT(エルシマジン)」を訪れた。また、記事後半では日仏の法律専門家による、「夫婦間レイプ」にまつわる法律の徹底比較をお届けする
パリでDV被害者の女性を迎えるアソシエーション
パリ14区に位置する、20世紀初頭に造られた石造りの建物の一室。ドアを開けると、ほんのりとバニラの香りが漂い、ボサノバ風の心地よい音楽が流れる。パステルカラーを基調にしたアパルトマンの室内は、まるで女性の隠れ家風の空間だ。
2007年にDV被害者の女性を支援する団体「ELLE'S IMAGINE'NT(エルシマジン)」を共同創設した臨床心理士のソニア・ピノ氏は、「心が傷ついた女性が訪れたときに、ホッと安心できる場所であってほしい」と優しい口調で語る。
DV被害者の女性を支援する団体「ELLE'S IMAGINE'NT(エルシマジン)」の共同創設者で、臨床心理士のソニア・ピノ氏(Photo: Ayana Nishikawa)
室内では、ボランティアのスタッフたちがフランス中からのDVの電話相談に対応。別室では心理カウンセラーが被害者の話に親身に耳を傾けている。ここに訪れる女性は、パートナーから心理的攻撃、身体的暴行、性的強要などのDVを受けた女性たちだ。この団体では、各被害者の状況に合わせて、司法プロセスの案内や心理的なサポートをしている。2018年には、320人のDVの被害にあった女性がサポートを受けた。
一見、よくある女性援助団体のようだが、特別な点は何なのか。前出のピノは、創設のきっかけをこう語る。「パリには、DV被害者の女性同士がグループで話し合う機会が少ないのです。一方で、DV被害者の女性たちにとって最も大切なのが、同じ経験をした人たちと話すこと。なので、女性たちが会話できる場を設けるために団体を創設しました」
「話す」ことが、どれほどDV被害者にとって効果があるのか――。週に1度開かれるという、被害者の女性たちが集まるグループディスカッションに参加した。