最新記事

クリスマスツリー

毎年2000万本以上も廃棄されるドイツのクリスマスツリー問題

2018年12月25日(火)18時15分
河内秀子(ドイツ在住ライター)

ベルリン市内のクリスマスツリー仮設店舗 (Photo:Hideko Kawachi)

<ドイツの家庭では生木のクリスマスツリーを飾るのがいまも一般的だが、使用後のツリーは1月には廃棄されてしまう。そこで木を再利用するエコフレンドリーなサービスを考えたスタートアップ企業が出現したが...>

ドイツではほとんどの家で生木のクリスマスツリーを飾る。12月に入った頃から街のそこここに1メートルから3メートルほどのモミの木を販売する仮設店舗が作られる。

christmastree2-weihnachtsbaum_transport-720.jpg

生木ツリーは購入すると網に包んで運びやすいようにしてくれる(Photo:Hideko Kawachi)

またドイツには「ツリーにする木はモミの木の畑に自分で切りに行く」という風習も根強くある。

どの都市の郊外にも大抵、クリスマスツリー用のモミの木を植えた畑がいくつもあり、クリスマスの1カ月ほど前からクリスマスイブ頃まで、一般客向けに開放される。

客は入り口でノコギリを貸してもらい、枝ぶりと大きさを吟味しながら好みの1本を見つけ出して、根元から切るというセルフサービス方式。サイズに応じて料金を払い、専用のツリー梱包機械に通して運びやすくしてもらって、自宅まで運ぶ。木の根を切り、乾燥した室内におくと葉が落ちやすいのでクリスマスの直前に購入する人が多い。

例えはドイツ最大級のツリー畑を持つ北ドイツ、ヴェンツェンドルフのエルカース農場では、毎年 25 万本のツリー用の針葉樹を栽培、出荷している。ここは首相官邸にもツリーを納めているが、最も人気のある 1.5~2メートルのツリーになるまでには 10 年近くの年月がかかるという。

1月には約2200万本ものツリーが廃棄される

このドイツ人の生木クリスマスツリーにこだわる風習は現在も全く廃れていない。生木のクリスマスツリーはプラスチックにはない雰囲気があって、美しく写真映えする、ということで、最近でも若い人たちも生木を買う傾向にあるという調査結果が出ている。(出典:ドイツ森林保護団体

だが、この生木ツリーは、12月25日、26日の祝日直前から1月6日の「東方三博士の日」まで飾られた後、廃棄されてしまう。たった2週間ほど飾られただけで、根を切られ捨てられてしまうのだ。その数はドイツ全体で毎年約2200万本以上と推測されている。

ベルリンを例にとると1月7日から19日までの間、清掃局が地区ごとに回収予定日を通達。その前夜から当日朝6時までの間に道にツリーを出しておくと、専用の回収車が回ってくるという仕組みになっている。回収後は燃料や堆肥としてリサイクルされるという。

christmastree3-weihnachtsbaumentsorgung3-720.jpgchristmasatree5-weihnachtsbaumentsorgung2-720.jpg

毎年1月7日以降に道に捨てられる使用後のツリー (Photos:Hideko Kawachi)

しかし回収予定日でない日に道に捨てる人も多いため、打ち捨てられたツリーがそこら中に転がる。枯れた枝がゴミにまみれることになる1月の街の様子はなんとも物悲しい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領の出生地主義見直し、最高裁が5月に

ビジネス

マツダ、米国でカナダ向け生産を一時停止 関税リスク

ビジネス

中国航空会社がボーイング機受け取り停止か、米国に戻

ビジネス

防衛費の在り方、日本が主体的に判断=日米交渉で石破
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    ハン・ガンのノーベル文学賞受賞はなぜ革新的なのか?…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプショック

特集:トランプショック

2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?