性器を握り、触る......「捕食者」と呼ばれる国連高官の手口と国連の闇
A CANCER IN THE U.N.’S CORRIDORS
地位と権力を利用した虐待
2人は15カ月の間に、ニューヨークとカナダで10回ほど会った。
ある時、リーはオタワから何時間もかけて車を運転し、モントリオールにいるカルカラに会いに行った。カルカラは大学で講演をするためにホテルに泊まっており、リーは彼の部屋に荷物を運ぶ手伝いをした。
ドアが閉まり、カルカラと2人だけになると、リーは不安になった。2人きりだとカルカラは不適切な発言や身ぶりをするのが常で、オーラルセックスを要求することもあった。カルカラがリーを登用したことへの「お返し」をしろ、ということだったらしい。
リーは、カルカラから送られてきたメッセージのスクリーンショットを見せてくれた。そこには、「準備しろ、練習しろ。ビデオを見ろ......気に入ったリンクがあったら送って」と書かれていた。
モントリオールのホテルの部屋で、カルカラはリーに、ポルノを見るか、どんな種類のものか、セックスには積極的か、自慰はするのか、練習しているか、といった質問をしてきた。リーは笑いでごまかし、そういう話はやめてほしいと頼んだ。するとカルカラはリーのパソコンを取り上げ、画面を開いた。リーがそれを取り戻そうとすると、カルカラはリーのズボンの上から性器をつかんだという。
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「彼はこういうことをたくさんの若い男性にやっている」とリーは言う。ただし自分の性的な欲望を満たすためではなく、「自分は高い地位にいるから何でもでき、相手は何もできないという感覚」を楽しんでいるらしい。
「初めての経験か?」というカルカラの質問に心をえぐられながら、リーは彼を押しのけ、部屋を出たという。
国連の高官による、優越的な地位を利用した卑劣な性的虐待。これは一個人だけの問題ではない。
英紙ガーディアンと米PBS(公共テレビ放送網)のドキュメンタリー番組『フロントライン』は今年、国連の平和維持部隊に参加する兵士たちが、現地の弱い立場の人々に対して性的虐待を行っていたことを告発している。
平和維持軍も現地の人に対する性的虐待の容疑で調査の対象に GILES CLARKE/GETTY IMAGES
『フロントライン』は世界で2000人以上の被害者を特定し、国連の対応は不誠実で、被害者が助けを求めるのは困難だったと結論付けた。
一方で、カルカラによる性的虐待はニューヨークの国連本部や、国連の関与する国際的なイベントの舞台裏で行われていた。国際法の専門家で安全保障問題にも詳しいマーク・ザイド弁護士によれば、外交官はたいてい「その国のエリート中のエリート」であり、そうした調査が高級官僚に及ぶのは驚くべき事態だと言う。
「国連平和維持部隊と国連の外交官には大きな違いがある」と、彼は言う。「平和維持部隊の隊員はどこかの国の兵士で、教育程度や素行はさまざまだ。平和維持部隊がそんなことをするとは思いたくないが、驚きはしない。だが外交官が? それは大問題だ」
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